2022 Fiscal Year Research-status Report
空間解像度の可変化による高精度かつ高効率な粒子法の実現
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22K17901
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松永 拓也 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (40782941)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 粒子法 / 数値流体力学 / 空間解像度 |
Outline of Annual Research Achievements |
粒子法では計算領域全体を一様な空間解像度で計算することを基本とするため、スケールギャップの大きな問題では多大な計算コストを要する問題がある。この問題に対処するため、本研究課題では非一様な空間解像度での数値解析を実現することのできる座標変換を用いた計算手法を新たに開発する。初年度となる2022年度は提案アルゴリズムの基本原理となる座標変換を伴う定式化等の確立ならびに数値安定性や解析精度の面での有効性の確認を目的として研究を実施し、以下の成果を得た。初等関数で記述されるいくつかの比較的単純な座標変換を用いて、内部流れの解析を試みた。その結果、双曲線関数を用いた座標変換によって所定の領域に計算点を集中させた非一様かつ滑らかな空間解像度分布を作成することができ、さらに安定化LSMPS法と呼ばれる粒子法に適用したところ、内部流れの解析において数値的に安定に解を得られることが明らかとなった。加えて、一様な空間解像度を用いた従来手法での計算結果と比較を行ったところ、同一の粒子数での条件において非一様な空間解像度を用いた場合に解析精度が向上されることが確認できたことから、提案手法を用いることによって局所的に空間解像度を高めたより効率の良い解析を実施できる実用性が示唆された。一方で、空間解像度の非一様性の増加に伴い、圧力ポアソン方程式の線形ソルバーの収束性が悪化する傾向が見られ、1ステップあたりの計算時間が増加する問題点が指摘された。この問題に対し、線形ソルバーの前処理にマルチグリッド法を適用することで収束性が大きく改善され、計算時間の増加を低減できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、粒子法流体解析における新しい空間解像度制御手法を作成し、非一様空間解像度を用いた解析の実現による計算効率の向上を目的としている。2022年度は初年度であり、本研究の根幹となる座標変換を用いた解像度制御の基本アルゴリズムの構築とその有効性の確認を予定していた。実際に、提案手法を流れの計算に適用し、解析精度の向上が確認された。このことから、当初予定を達成することができており、おおむね計画通りに研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果により、座標変換を用いた解像度制御手法のアルゴリズムの大枠が確立された。そこで今後は、座標変換の高度化により、解像度分布の自由度を向上することを狙う。具体的には座標変換を表す関数を一般化し、任意の位置で解像度を指定できるようにする。この拡張により、計算領域が複雑な場合においても解像度要求の高い領域に粒子を集中させることができるようになる。それと並行して、最新の研究動向の調査とこれまでに得られた研究成果の発表を目的として、国内講演会や国際会議に参加する。更に、研究成果をとりまとめた論文を執筆するためのデータ整理を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行によって国内講演会と国際会議がオンラインで開催され、当初予定していた複数の出張が発生しなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。翌年度に開催される学会の参加費と旅費に使用するほか、現在の研究計画を加速するための計算機設備の補強ならびにコード開発やデータ可視化等に用いるソフトウェア購入のための費用にあてる。
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