2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K17956
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森岡 博史 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 研究員 (20739552)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 機械学習 / 因果探索 / 非線形解析 / 深層学習 / 計算神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脳の高度情報処理機構の基盤をなす未知の脳内情報伝搬・統合メカニズムの解明を目的とし,そのために機械学習に基づく新たな非線形ネットワーク因果構造推定法を開発することで挑戦するものである. 本年度は主に,研究実施計画における「データの背後にある無向ネットワーク構造の推定法の研究」を目指し,そのための要素技術となる,多次元因果構造の推定法の開発に従事した.提案法は各ノードが多次元な観測情報を持つネットワークデータを想定したものであり,特に変数間に未知の混合が加わっている際に,それをデータ駆動的に脱混合することにより,その背後にある本来の多次元因果構造の推定を可能とするものである.そのように非線形混合の存在を陽に考慮することにより,従来では困難だった多次元センサネットワークからの因果探索が可能になる.また,新たな推定法として自己教師学習に基づくものを提案しており,従来法よりも効率的に学習可能である.提案法の有効性を示すため,人工的に生成した遺伝子制御ネットワークデータに適用した結果,従来法よりも高い精度で背後にある因果構造が推定できることが示された.これらの結果は複数モダリティにより計測された脳計測データを解析する上でも重要な要素であり,本研究を遂行する上で重要な足がかりとなる.なお,提案法は脳計測データのみでなく様々な多次元ネットワークデータに適用可能であり,幅広い応用が期待される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に,研究実施計画における「データの背後にある無向ネットワーク構造の推定法の研究」を目指し,そのための要素技術となる,多次元因果構造の推定法の開発に従事した.提案法により,複数モダリティにより計測されたヒト脳活動計測データから,脳領野間の機能的因果構造を推定可能になることが期待される.ここで得られた成果は査読付き国際会議にて発表した.以上を総合して,ヒトの脳内情報伝搬・統合メカニズムの解明に向けた研究を順調に進められたと考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続き「データの背後にある無向ネットワーク構造の推定法の研究」に従事するのに加え,次の段階である「非線形ネットワーク因果構造の推定法の研究」を進める.本年度で提案した手法は観測モデルや因果効果の空間的一様性を仮定することでデータの背後にある多次元因果構造を推定するものであるが,実際の脳内においてはそれらの領野間での違い(非定常性)が想定される.そのため次年度では,そのような領野間の違いを考慮した上で脳内の非線形因果構造を推定する手法を提案し,ヒト脳内の情報伝搬・統合機構を統合的に理解することを目指す.また,提案法は実際にヒト脳活動計測データに適用することで評価を目指す.
|
Causes of Carryover |
研究内容を鑑みて当初計画していた計算機の購入などを見合わせたほか,コロナウィルスによる影響で旅費の使用も想定を下回ったため,当初の支出見込みを下回った.繰越分は次年度における物品購入費(計算機サーバなど)や旅費に当てる予定である.
|
Research Products
(3 results)