2023 Fiscal Year Research-status Report
心を動かす質感認知と瞳孔反応の因果およびその操作技術
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22K17987
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
田村 秀希 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40908612)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 質感 / 瞳孔 / 光沢感 / 情動 / 時間的主成分分析 / 線形混合効果モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は,瞳孔反応操作により質感知覚が変化するかどうかを実験によって調査したが,実験刺激として用いた画像が丸太や宝石などの一般物体であり,その物体自身が持つ意味的要因が強すぎたことにより,瞳孔反応を操作したとしても光沢感評定値を変調させるまでには至っていないのではないか,と考察した.これを踏まえ,本年度は物体刺激を一般物体の画像から,CGで生成した物体画像群を用いた.この画像群はランダムに変形させた幾何学的形状のため,意味的要因をほぼ無視できると期待し,実験に使用された.実験ではこれまでと同様に,瞳孔径を操作させるための情動喚起刺激(Neutral/Negative画像)を呈示した後に,物体画像呈示するというパラダイムで実施した.実験参加者は呈示された刺激の光沢感を7段階で評定し,その際の瞳孔径が計測された.その結果,一般物体刺激を用いた実験時と結論は変わらず,情動喚起刺激条件間で光沢感評定値に差があるとは言えなかった.ただし,一貫して,高い光沢感知覚で瞳孔がより縮瞳するというこれまでの研究結果(Tamura et al., 2024; 本年度採択)は支持された.実験2では,7段階の光沢感評定タスクから,光沢感が高いか低いかを二択で応答させるタスクに変更し,参加者の光沢感応答を示す心理測定関数を求める実験パラダイムを採用した.この予備実験の結果では,情動喚起刺激がNegative画像の場合に,より光沢感を感じにくくなるという仮説を支持するデータが得られており,次年度も引き続きデータを取得する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトで新たに提案した複数の実験パラダイム・複数の刺激種類から,高い光沢感知覚で瞳孔がより縮瞳するという,これまで研究提案者が報告した成果を包括的に支持する結果が得られた.当初提唱した仮説を支持する直接的なデータが得られるまでは至っていないが,核となる現象の頑健性が明らかになったことは,本プロジェクトの順調な進展の表れであると考えられるため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は光沢感判別タスクを用いた実験パラダイムでのデータ取得を進めるとともに,瞳孔径を操作させる刺激の変更や,対象とする質感タスクの変更から,統制実験を実施し,仮説の検証を進めていく.
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Causes of Carryover |
昨今の急激な円安に伴い,次年度の国際学会発表のために十分な旅費を確保するため.国際学会発表旅費(ECVP2024予定)に使用する.
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