• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2022 Fiscal Year Research-status Report

霊長類における視知覚ネットワークを介した情報伝達

Research Project

Project/Area Number 22K18005
Research InstitutionNagoya University

Principal Investigator

井上 漱太  名古屋大学, 環境学研究科, 学振特別研究員(PD) (20940927)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords視線 / 注意 / ドローン / ニホンザル
Outline of Annual Research Achievements

本年度は宮崎県串間市幸島にてニホンザルを対象に、ドローンと個体識別を用いた野外調査を行うとともに、得られた空撮映像から個体および個体の体部位のトラッキングを行った。野外調査は合計3ヶ月行った。トラッキングはTRexおよびDeepLabCutを用いて行った。その結果、TRexでは95%、DeepLabCutでは85%を超える精度を達成した。個体レベルでのトラッキングの結果、社会的順位と採食に費やす時間の間に有意に相関があることを発見した。さらに、高順位の個体では行動状態の切り替えの頻度が低いことも確認された。
ついで、個体の頭部方向から視野を概算した。ビジランス頻度を定量化した結果、高順位個体ほど秒当たりのビジランス頻度が低く、低順位になるにつれて、ビジランス頻度が上がることを確認した。さらに、個体間における見た-見られたの関係を定量化した。その結果、社会的に最上位オスおよび2位オスへの注意が有意に高いことを発見した。また、社会的に低順位へと向かうにつれて、見られた量が減少することを確認した。ニホンザルの群れでは厳しい順位関係が存在することが知られており、攻撃交渉の頻度を低下させるために、上位個体へ注意を向けているためだと考えられる。これまでは理論的に、上位個体への注意が高くなることが提唱されていたが、実証研究はほとんど存在しなかった。本研究でははじめて野生の霊長類の群れにおける視線を定量化し、視線によるコミュニケーションに踏み込んだ考察を可能にした。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の計画では、本年度までに自然状態における群れ内での注意ネットワークを構築し、パターンを見出すことを目標としていた。調査およびデータ解析の結果、注意ネットワークの構築に成功し、自然状態における群れ内での視線ネットワークの基本的パターンの定量化に成功した。特に、視線から算出した注意と社会順位の関係には明確なパターンが存在することを突き止めた。また、性別を要因としたパターンも検討をおこなったが、明確なパターンは見られなかった。
調査中に複数の個体が死亡したため、サンプルサイズとしてはやや不十分な点があるものの、パターンの明確さと計画に対する進捗度合いを考慮し、本研究は概ね順調に進展しているといえる。

Strategy for Future Research Activity

本年度以降の研究計画としては、実験的操作を加えた場合の注意ネットワークのパターンや時系列的変動に注目する。本調査は、幸島に生息するニホンザルを対象に、日常的に行われている餌付けをドローンを用いて観察している。そこで、餌の種類や分布をコントロールすることにより、各個体が持っている情報に差異を与える。
例えば、ある個体にのみ見えるよう新規物を提示する。 提示された個体の注意を促し、その注意が他個体に伝播する様子を捉える。これにより、 視線追従による注意の伝播が生じるのか、最終的に群れ全体に広がるかどうかを検証する。 また、視線の伝播における物理的な距離・社会的関係・ネットワーク特徴量の重要性を推 定する。この課題により、視線追従による情報の伝達機構を霊⻑類の群れではじめて明らかにすることができる。
ついで、動きと視線関係についても実験を行う。この実験では、新奇物ではなく、ピーナッツなど高価値の餌を個体に提示する。高価値 の餌を獲得するために、個体はどう動くのか、その動きは周囲の行動をどう変えるのか、 行動の変化はどのように伝播するのかを検証する。このとき、視知覚ネットワークからそ の情報伝達が予測できるかを合わせて検証する。この課題により、行動生態学的側面から 視知覚ネットワークの役割を明らかにすることができる。

Causes of Carryover

本研究計画は順調に進行しているものの、次年度以降も継続して行う予定である。次年度は、複数の野外調査および国際学会での発表や論文投稿を予定しているために、次年度使用額が生じた。

URL: 

Published: 2023-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi