2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K18005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井上 漱太 名古屋大学, 高等研究院, 特任助教 (20940927)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ニホンザル / ドローン / 注意 / トラッキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では野生ニホンザル群を対象に、誰が誰をどれくらい見ているか、その注意は情報伝達のチャネルとなりうるかの検証を試みている。空撮とコンピュータビジョンによる個体の位置・姿勢トラッキングを駆使し、野生・飼育下を含めてこれまで存在しなかったデータセットを作成し、解析を試みている。今年度は主にニホンザルの視野および中心視野の範囲の推定をおこなった。実験者が新規物をニホンザルに向かって投擲し、それを個体が首の身を動かして確認する様子を上空から撮影した。これまで実験室環境でマカクの視野を推定する実験はあるが、野外で実際にどの程度首を動かし、物体を視野で捉えるかはわかっていなかった。宮崎県の幸島に生息するニホンザルを対象に実験系の構築を行い、合計150回ほどのデータ収集をを完了させ、現在解析中である。予備的な解析結果ではあるが、サルの反応速度によっていくつかの異なる反応が見られたが、予想通り視野の中心で物体を捉えていることが明らかになった。並行して、これまでの収集した野生のニホンザルの採餌場面における空撮データの解析も引き続き行った。自動トラッキングによる推定の精度を確かめるために、全ての動画、全ての個体の位置推定結果を人力で確認し、ミスがあれば修正を行った。これによって、個体の行動軌跡の抽出が完了した。上記の実験と姿勢推定を合わせて行うことで、どの個体がどの個体をどの程度見ているのか、という注意ネットワークのパターンの解析準備が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集は順調に進行しているが、計画にあった視知覚ネットワークの機能を検証する実験までは行えていない。しかし、より厳密な解析を行うために計画を超えた視野推定実験を行った。これによって、解析の確らしさを担保した。また、複数パートから構成される解析の中で、一番時間がかかるトラッキングの修正パートがほぼ完了した。したがって、本研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きデータ収集を行う。なぜなら、ニホンザルの群れを構成する個体はもちろんのこと年をとり、順位が変動する。この様子を引き続きデータ化しておくことは重要である。くわえて、新たな実験として視線の伝搬実験やそれによる情報伝達が起こりうるかの検証を行いたい。解析としては、姿勢推定モデルの改良と視知覚ネットワークのパラメータの定量化およびそのパターンを形成する要因について検討したい。
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Causes of Carryover |
トラッキング結果の修正用に数名のデータ入力員を雇用したが、予定していたよりもシフトに入れなかったため経費の余剰が生じた。
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