2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel thiol biomarker for the detection of copper stress in marine phytoplankton
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22K18021
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
Wong KuoHong 金沢大学, 物質化学系, 助教 (80907238)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 植物プランクトン / 銅 / バイオマーカー / チオール類 / 北太平洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
高濃度の銅は海洋生態系の基盤となる植物プランクトンにとって有毒であるため、銅の環境毒性を正確に評価できる手法が求められている。本研究では、チオール類を用いた海水植物プランクトンに対する銅毒性の新しいバイオマーカー評価法を確立するため、珪藻の単一株及び天然海水中の植物プランクトン群集を銅添加有無の条件下において培養した。また、外洋域へのチオール類バイオマーカーの適用可能性を検討するには西部北太平洋(熱帯、亜熱帯、亜寒帯)の天然表層海水(水深:10-100 メートル)を採取した。 植物プランクトンは吸引ろ過によって培地から分離し、試料中の色素とチオール類含有量は高速液体クロマトグラフィーを用いて定量した。本研究では,植物プランクトン細胞中に一般に生産される二種類のチオール類:Cysteine(Cys) とGlutathione(GSH)を中心に分析した。 銅の添加により天然海水中の海水植物プランクトンが弱まれ、細胞中のGSH含有量が大きく増加した(Cys 含有量は一定であった)。植物プランクトンが銅の毒性に対抗する際に生産するGSHは銅毒性のバイオマーカーとして適用できると考えられる。 西部北太平洋西部の表層水における粒子態GSHは亜熱帯において最も高い濃度を示した。粒子態GSHは水塊の分布と関係性がなく,主に沈降粒子として亜表層に到達したと考えられる。粒子態GSH濃度が高い海域では、シアノバクテリアの色素マーカーであるZeaxanthin の濃度が高かったため、シアノバクテリアが主な植物プランクトン種である可能性が高い。シアノバクテリアは銅に対する耐性が弱いため,GSHを多く生産して銅の毒性を対抗するメカニズムを持つ可能性がある。一方,銅に対する耐性の高い珪藻が多く生息している亜寒帯では,生態系における銅の毒性が低いため,粒子態GSH濃度も低下した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、植物プランクトン細胞内のチオール類の定量法を確立でき、チオール類バイオマーカーの開発に必要な試料(河川、沿岸域、外洋域)もすべて採取済みである。 R5年度前半まで予定している植物プランクトン種の銅の毒性に対する多様性の解明についても実施済である。らん藻、珪藻、及び天然植物プランクトン群集を自然条件と銅添加条件下において培養することにより、銅の毒性に対する応答として生産される各種のチオール類を解析できた。 また、R5年度中に実施する予定のバイオマーカーになりうる物質の探索についても現在順調に進行している。培養後の細胞内チオール類の含有量変化を観測することにより、チオール類の一種であるGlutathioneは銅毒性のバイオマーカーとして有望であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は天然海水中の粒子態チオール類を続いて分析し、銅の環境水中における毒性を評価する。また、国際共同研究を通じて様々な水圏環境におけるチオール類バイオマーカーの適用可能性を検討する。現在は、「ブルーカーボン生態系」と呼ばれ、高い一次生産によって大気から二酸化炭素を吸収する優れた機能を持つマングローブ域へのチオール類バイオマーカーの適用を考えている。そのため、マレーシアやインドの研究者との連携を計画している。
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Research Products
(1 results)