2022 Fiscal Year Research-status Report
光学的オフライン分析に基づく非水溶性エアロゾルの氷晶核への寄与解明
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22K18024
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大畑 祥 名古屋大学, 高等研究院(宇宙), 助教 (70796250)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エアロゾル / 氷晶核 / 鉱物ダスト / 黒色炭素 / バイオエアロゾル |
Outline of Annual Research Achievements |
鉱物ダストや黒色炭素(BC)などの非水溶性エアロゾル粒子(WIAPs)は、放射や雲との相互作用を通じて気候に影響を及ぼしている。しかし、大気中のWIAPsの種別を特定し、その数濃度を定量化する手法は限られており、これらの動態の理解は不十分である。本研究では、大気中のエアロゾルをフィルタに採取し、水中に分散させ、個々の粒子の複素散乱振幅を測定する新しい光学的手法により、WIAPsの分類と数濃度定量を試みた。複素散乱振幅は、粒子の複素屈折率・体積・形状に依存する複素数のパラメータである。2021年春季に名古屋の都市大気で採取されたWIAPsの複素散乱振幅を測定し、その特徴に基づいてWIAPsをダスト様粒子・BC様粒子・バイオエアロゾル様粒子に分類した。BC様粒子の数濃度は他の測定器により独立に測定されたBC数濃度と強く相関した。また、観測期間中の主要なWIAPsはダスト様粒子とBC様粒子であり、電子顕微鏡分析とも整合的なデータが得られた。これらの結果は、本手法がWIAPsの時空間分布を定量する新しい手法として、様々な大気環境での観測に応用できる可能性を示すものである。本結果をまとめ、査読付き国際誌に投稿した。また、都市大気におけるバイオエアロゾルの動態を理解するため、東京スカイツリーにおいて蛍光性エアロゾルの長期観測を実施し、初期的な解析結果を得た。今後、バイオエアロゾル数濃度の季節変化と氷晶核数濃度への寄与を明らかにするためのデータ解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、非水溶性エアロゾルの分析手法の評価を進めることができ、査読付き国際誌の投稿に至った。また、当初の計画にはなかったが、都市大気における蛍光性エアロゾルの長期観測も実施することができた。以上のことから、本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本手法で測定された名古屋都市大気の非水溶性エアロゾルと氷晶核粒子の数濃度の関係を定量的に明らかにするための解析を進める。また、東京の都市大気で長期観測した蛍光性エアロゾルのデータ解析を進め、バイオエアロゾルの数濃度の季節変化を明らかにする。さらに、北極域において蛍光性エアロゾルの観測を行う。
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Causes of Carryover |
当初、微粒子測定器に安定して試料を導入するためのカセットチューブポンプの購入を計画していたが、測定器の粒子検出頻度を向上させるための特注フローセルの調達が研究推進にとってより重要であることが分かり、カセットチューブポンプを購入せずにフローセルの選定を進めたため、次年度使用額が生じた。仕様を定めた特注フローセルの購入等に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)