2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of wind erosion risk assessment using dry vegetation index from remote sensing
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22K18025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武 靖 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (20813405)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 枯れ草量 / 臨界風速 / ダスト / 衛星観測 / 風食 / 乾燥地 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.衛星枯れ草指数による枯れ草量の推定 ゴビ砂漠ツォクトオボー(TsO)の地表面条件の異なる18地点において、2001~2022年春季に取得した植生写真データの一部をMIPARソフトウェアで枯れ草の被覆率を算出し、学習データセットを作成した上で、画像解析用ディープラーニングモデルを開発した。モデルによって植生写真データから得た枯れ草の被覆率データと衛星植生指数MODIS Soil Tillage Index(STI)の関係を明らかにして、精度の高い枯れ草量推定手法を開発した。 2.枯れ草効果の検証 乾燥地では、枯れ草植被率がダスト発生臨界風速に影響を及ぼし、その結果、ダスト発生に影響する。本研究は、2001~2021年のダストが頻繁に発生する3月と4月のゴビ砂漠とその周辺地域におけるダスト発生及び3種類の定義による強風発生頻度の時空間分布を調べた。それぞれの強風の定義で予測されるダスト発生とダスト発生の観測結果によるスレットスコアを用いて、枯れ草の変動がダスト発生に及ぼす影響を評価した。その結果、MODIS STIから算出される枯れ草は、3月よりも4月において顕著にダスト発生に影響していた。このことは、3月は枯れ草に加え、土壌の凍結融解や積雪といった地表面パラメータについても考慮する必要があることを示唆している。しかし、4月は枯れ草植被率のみで推定される臨界風速を用いることで、ダスト発生の予測精度が向上した。このことから、枯れ草植被率が4月のダスト発生の変動を支配する重要な要因であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のためモンゴルゴビ砂漠現地での植生調査はできなかったが、現地気象台のスタッフに代行調査してもらい、現地植生調査データが取得できた。画像解析ディープラーニングモデルを開発したことで、枯れ草量の衛星観測法の開発・手法の改良を進めることができた。 MODIS STIから推定した枯れ草植被率のダスト発生への影響に関しては、地上実況気象通報式(SYNOP)データによる検証を行った。枯れ草効果を考慮した臨界風速の推定手法を開発し、ゴビ砂漠とその周辺地域における枯れ草の変動がダスト発生に及ぼす影響を評価できた。これらの発見は、枯れ草植被率の推定をダストモデルに応用すべきであることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「粗度長による枯れ草推定手法の検証」 TsO周辺において、窪地(谷底)および斜面に計3ヶ所で気象及び飛砂の常時観測を行っている。これらに加えて地表面条件の異なる3~5箇所 で、風食が激しい時期(春季)のみの臨時観測地点を追加する。各地点において、3~4高度の風速、風向、気温、飛砂量を測定し、粗度長と臨界風速を見積もる。この粗度長、臨界風速と比較することで、開発した枯れ草量推定手法の妥当性を検証する。これにより、精度を数値で明示できる衛星データによる枯れ草量広域データの作成が可能になる。 2.「枯れ草効果を導入した広域風食リスク予測モデルの開発」 枯れ草量と臨界風速の比較においては、枯れ草等の粗度物質による臨界風速補正関数f(λ)(Shao 2008)を用いるが、この補正関数と、係数および被覆率・遮蔽率から粗度密度(λ)推定の妥当性を調べる。衛星枯れ草量広域データを補正関数に代入することで、信頼できる広域風食リスク(臨界風速)予測モデルを開発する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によりモンゴル現地調査が不可能になり、また参加予定であったナミビアでの国際学会(International Conference on Aeolian Research)が、次年度にアメリカでの開催へと変更となったため、次年度の外国旅費と学会参加費に使用する。
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