2023 Fiscal Year Research-status Report
放射線発がんの新たなリスクモデルを細胞間コミュニケーションの視点から考える
Project/Area Number |
22K18032
|
Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
恵谷 玲央 大分県立看護科学大学, 看護学部, 学内講師 (20783450)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 発がんリスク / 低線量・低線量率放射線 / 放射線影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、低線量・低線量率放射線の発がんリスク推定において、線量率効果の組み込みを目指すものである。具体的には、放射線誘発急性骨髄性白血病 (rAML)の発症リスクを高めるSfpi1遺伝子欠失を持つ造血幹細胞(HSC)の蓄積に焦点を当てる。従来のリスク推定では、低線量・低線量率放射線による発がんリスクはDNA損傷に伴う遺伝子変異の蓄積が線量に比例することを前提としてきた(LNT仮説)。しかし、これまでの研究で、低線量のX線やγ線照射したマウスではSfpi1遺伝子欠失を有するHSCの蓄積が見られなくなる可能性が示唆され、HSCを取り巻くニッチ細胞や無傷のHSCとの細胞競合により、Sfpi1遺伝子欠失を有するHSCが排除されている可能性が考えられる。本研究では、異なる線量率でγ線をマウスに照射し、時系列を追って片側のSfpi1遺伝子欠失変異HSCの蓄積の程度を定量的に明らかにし、細胞競合の線量率効果を検証し、線量率に応じたHSCの細胞動態およびSfpi1遺伝子欠失を持つHSCの細胞競合の変化を組み入れたrAMLモデルを構築することを目指す。今年度は関連する最新の研究成果に基づき、放射線照射によるHSCおよびニッチ細胞の動態や細胞間の相互作用に関する最新の研究を調査し、文献レビューを行った。rAMLモデルの構築に必要な知見を得ることができ、より実証的な解析を進めるための基盤を築くことが可能となった。2024年度は具体的なデータ解析を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の開始とデータ収集に遅れが生じ、計画が予定通りに進んでいない。現在、研究計画に即して進められるよう迅速に取り組んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づいて実験を継続し、解析を進める予定である。必要に応じてエンドポイントを見直し、年度内に研究を完了するように調整し、予定された成果を達成することを目指す。
|
Causes of Carryover |
次年度の科研費使用額が生じた理由は、今年度の研究進捗が遅れ、予算の一部が未使用となったため。 今年度予算に計上していた、分析用試薬購入のための物品費を次年度初期に使用する計画である。
|