2022 Fiscal Year Research-status Report
都市水環境に残留する抗うつ薬の存在実態と排出源に関する研究
Project/Area Number |
22K18042
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Research Institution | 大阪市立環境科学研究センター |
Principal Investigator |
大方 正倫 大阪市立環境科学研究センター, その他部局等, 研究員 (80828939)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 抗うつ薬 / 代謝物 / 液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計 / 固相抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、抗うつ薬とその代謝物を対象に、都市河川における存在濃度や下水処理における除去特性を明らかにすることを目的としている。今年度は、まず、国内で処方されている抗うつ薬とその代表的な代謝物(合計32物質)を対象に、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いて迅速かつ高精度に分析するための一斉分析法を検討した。 はじめに、既に抗うつ薬21物質を対象として開発していた一斉分析法(従来法)を基に、新たに抗うつ薬1物質と代表的な代謝物10物質の合計11物質を加える形で一斉分析法を検討した。新たに追加した11物質について質量分析計(MS)での測定条件を最適化したのち、液体クロマトグラフ(LC)において対象物質が過度に重複して溶出しないように従来法からLCでの分離条件を改良した。これにより、従来法よりも1検体当たりの測定時間はやや長くなったものの、検出下限等を大きく低下させずに感度を維持することができた。 次に、従来法と同様の固相抽出による前処理法により、環境水での添加回収試験を簡易的に実施し、定量精度を確認した。その結果、分析対象とする抗うつ薬を重水素や13Cといった安定同位体でラベル化したサロゲートを導入して同位体希釈法により定量することで、LC-MS/MSでのイオン化における夾雑物質の影響が補正可能であることが示唆された。ただし、Milnacipranの代謝物は固相抽出においてほとんど回収されず、前処理法での改善が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度途中の施設移転に伴い、試料の調製や前処理を行う実験室が新しい環境下に変更となり、抗うつ薬測定に使用するLC-MS/MSも更新されたため、施設移転後にも測定条件の最適化や水質試料での分析精度確認等を行った。そのため、河川底質や下水汚泥を対象とした前処理方法の検討や分析精度確認が未着手となった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、水質試料において、Milnacipranの代謝物が回収されなかった原因を調べ、前処理法を大きく変更しない範囲で改善策を検討し、一斉分析法として確立する予定である。また、河川底質や下水汚泥を対象とした前処理方法も検討し、分析精度の確認を行う予定である。これらにより分析方法が決定でき次第、河川や下水処理場での抗うつ薬とその代謝物の調査モニタリングを開始する予定である。
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Causes of Carryover |
分析法検討の遅れのため、試薬や器具等の消耗品の使用が想定よりも少なくなった。次年度以降は前処理消耗品の使用増が見込まれるため、次年度使用額も合わせて有効活用する予定である。
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