2023 Fiscal Year Research-status Report
中国電力部門の低炭素化における気候災害の影響に関する実証研究
Project/Area Number |
22K18065
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
楊 潔 富山大学, サステイナビリティ国際研究センター, 研究員 (10883556)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 気候変動 / 再生可能エネルギー / 気温 / 降雨量 / 閾値分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動に伴う異常気象の激甚化・頻発化が観測され、電力インフラにおける気候災害リスクへの脆弱性が高まるとともに、非化石電源比率の高い電源構成において電力の安定供給は大きな課題となっている。本研究では、2003年から2019年までの17年間の地域データに基づき、統計分析を用いて気候災害が地域電源の低炭素化への影響を分析することを通じて、電力部門における気候変動適応策のあり方について検討することを目的としている。具体的には、風力発電と太陽光発電の導入設備容量を電力部門の低炭素化の指標とし、寒波、熱波、干ばつ、豪雨といった極端な気温や降雨量の変化から生じる気候災害が再エネの導入に与える影響を検証した。 その結果、まず気候変動の影響がエネルギーの種類や極端気象の性質により異なり、極端気象の発生頻度と強度が重要な役割を果たすことが示唆された。また、風力発電は熱波よりも寒波の影響が大きく、太陽光発電は寒波と熱波の両方から負の影響を受けることが分かった。全体的に見ると、降水量に関わる異常気象は風力発電に大きな負の影響を与えない一方で、太陽光発電は干ばつに対する適応性が高く、豪雨に対する脆弱性が高いことが確認された。さらに、異質性分析では、太陽光発電が風力発電よりも異常気象の影響を受けやすく、異なる季節において太陽光発電容量により顕著な負の影響を与えることが示された。また、風力発電は北部および南西部地域での異常気象に対してより脆弱であり、太陽光発電は東部地域でより影響を受けることも明らかにした。これらの発見は、再生可能エネルギーの割合が高い地域において気候脆弱性が高い可能性があること、および季節と地域による顕著な異質性が存在することを強調した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、当初の研究計画通りに、研究課題は順調に進んでいる。本研究の研究期間は全体で3年であり、R4年度の前半には主にデータの収集・整理に集中した。具体的には、2003年から2019年にかけて中国各県の再生可能エネルギーと気候に関するデータセットを構築し、研究補助員の協力を得ながら11月までにデータの収 集と整理を完了した。R4年度の後半では、統計分析と初稿の作成に向けて研究活動を進めていた。R4年度の11月からは予定通りに統計分析を行い、その結果を研究会で発表することで有益なコメントを得ることができた。そして、ヨーロッパ環境資源経済学会での研究発表に向けて、2月には論文の初稿を完成した。 R5年度の7月に第28回ヨーロッパ環境資源経済学会(EAERE2023)に参加し、研究発表を行なった。また学会で有益なアドバイスを得ることができた。R5年度の後半では、学会で得たコメントに基づき、より詳細な統計分析を行うことで、研究結果の信頼性を高め、論文の初稿の修正・改善も計画通りに完成した。
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Strategy for Future Research Activity |
R6年度からは、以下の推進方策に取り組んで研究を進める予定である。①R6年度5月中に論文原稿を英文校正に提出し、最終修正が終わってからプレプリントとしてSSRNに投稿する。②R6年度5月中にSSRNに投稿すると同時に、国際学術誌に投稿し、R6年度内に論文が掲載されることを目指す。③投稿から掲載までの間に、日本国内の環境経済学研究会に参加し、また気候変動分野の専門家を招待し、小規模研究会を開催することで研究成果の発信や分野への学術貢献に努める予定である。
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Causes of Carryover |
①R6年度5月中に論文原稿を英文校正に提出する予定であり、論文原稿の修正を行うための英文校正アプリの利用料や英文校正サービスの利用料に使用する。 ②R6年度5月中に国際学術誌に投稿するための投稿料に使用する。 ③投稿から掲載までの間に、研究成果を公開・発信するための研究会参加費や旅費に使用する。 ④気候変動分野の専門家を招待し、小規模研究会を開催するための専門家の旅費や活動を行うための他の費用に使用する予定である。
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