2022 Fiscal Year Research-status Report
食料の生産と消費の時系列変化に着目した淡水需給逼迫度の変動要因分析
Project/Area Number |
22K18073
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山口 陽平 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構(BKC), 研究員 (80910596)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 食料需給 / 食料貿易 / ウォーターフットプリント / 水資源需給 / 変動要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は淡水需給逼迫度と淡水資源必要量の二時点間での比較(基準年:2000年、比較対象年:2018年)に基づく変動要因を分析した。生産側については淡水需給逼迫度に、消費側については淡水資源必要量に焦点を当て、それぞれの二時点間での変動要因を分析した。変動要因を詳細に分析するための要因分解式の作成・修正を繰り返し、淡水需給逼迫度や淡水資源必要量を促進または軽減する要因を定量的に示すための分析モデルの推敲を進めた。これにより、時系列変動要因の分析へ拡張するための基礎となる分析モデルの構築を進めた。 本年度は食品間の投入産出収支の分析に向けて、上記二時点について食料の生産量や消費量、食料の輸出入量、収穫面積、灌漑利用面積といったデータの整備を進めた。また、整備した食料需給や食料貿易のデータをもとに、各国間の食料貿易量や各国の食料需給量を世界規模で推計した。これにより、食品間の投入産出収支を分析するための大枠となる食料貿易収支や食料需給収支の分析データの整備を進めた。 本年度は淡水需給逼迫度に対する天水消費量の影響の定量化に向けて、既存の統計データベースや既往文献から、天水・灌漑用水消費原単位や収量、灌漑効率といったデータを整備した。また、既往文献を参考に、各淡水消費原単位と灌漑効率の時系列変化を簡易モデルによって推計し、天水消費と灌漑用水消費の時系列データの整備を進めた。ウォーターフットプリントや水ストレス指標をベースとした手法により、上記二時点について生産側の淡水需給逼迫度や消費側の淡水資源必要量を世界規模で推計した。これらにより、食料生産による淡水消費に関する技術改善や、天水消費や灌漑用水消費への依存の時系列変化などの寄与を一定程度考慮するためのデータの整備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はデータの整備や分析モデルの作成・修正など、研究の基礎となる部分をより精緻化するための作業を主として進めることで、淡水需給逼迫度や淡水資源必要量の変動要因を詳細に分析するためのモデルを構築した。しかし、現状では二時点間での比較に基づく変動要因の分析に止まっており、時系列変動要因の分析へ拡張が課題として残った。また、本年度は各国間の食料貿易収支や各国の食料需給収支など、食品間の投入産出収支の大枠となる分析データを整備した。しかし、本年度は食品間の投入産出収支の分析枠組み構築の着手までには至っておらず、こちらも次年度以降の課題として残った。また、本年度は天水消費と灌漑用水消費の区別を明示的に取り扱わなかったため、両者を区別した分析についても検討課題として残った。総じて、当初想定よりも進捗にやや遅れが見られるものの、各分析の基礎となるデータはおおよそ整備できており、次年度の研究遂行は十分に可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
過年度に整備した分析モデルをもとに、研究推進に重要となる淡水需給逼迫度や淡水資源必要量の時系列変動要因を定量的に示すための分析モデルの構築に重点的に取り組む。分析モデルの構築にあたっては、天水消費と灌漑用水消費の区別を明示的に取り扱った分析への拡張を検討する。過年度に整備した分析データをもとに、食料需給や食料貿易といった活動量を中心に時系列変化の様子を確認し、食品間の投入産出収支を優先して分析する対象の年や国・地域を選定し、食品間の投入産出収支を分析するための枠組みの構築を進める。また、これらの時系列変動要因の分析結果を鑑みつつ、既往文献の調査を行うなどして空間要因の分析についても検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は一部学会がオンライン開催となったことにより当初想定よりも旅費が節約された。また、分析モデルをより精緻化するための作業を重点的に進めたところ、分析結果のより慎重な精査が必要であると判断したため、当初予定していた論文投稿を次年度に持ち越し、そのために想定される予算執行の一部を次年度に繰り越す必要があると判断した。 このため、次年度に繰り越した予算は、本研究をより進展させるために、論文投稿に関わる費用の執行に使用する。また、学会発表を行うための旅費や論文発表に関わる費用、データ分析のためのソフトウェアや参考書籍などの購入費用、そのほか研究遂行に必要な消耗品の購入費用などの執行に使用する。
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