2022 Fiscal Year Research-status Report
人間環と自然環における薬剤耐性菌拡散機構の解明-One Healthの視点から-
Project/Area Number |
22K18083
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
藤原 麻有 京都橘大学, 健康科学部, 専任講師 (80828327)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 基質特異性拡張型βラクタマーゼ / One Health / 薬剤耐性菌 / 自然環境 / 公衆衛生 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,βラクタム系抗菌薬が効かない基質特異性拡張型βラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase;ESBL)が国内で増加傾向にあり,その背景に入院歴のないヒトでの罹患が挙げられ,健常人でも10%程度は腸管に保菌していると報告されていることから,市中への拡散・定着が問題となっている.本研究では,ESBL産生菌に焦点を当て,ヒトの生活圏に密着している自然環境中にどれほど拡散されているのかを調査する.また,その拡散に周辺地域のヒトから検出されたESBL産生菌の関与があるか否かについて調査し,自然環境からヒトへの感染リスクを抑制するための基礎的なデータを構築する研究である. 今年度はヒト生活圏にある遊水域を対象として,河川水を採取し,ESBL産生菌の拡散状況について調査を行った.収集した複数の試料から対象とするESBL産生菌を検出できたことから,自然環境試料からの検出手法は確立できたと考える.また,河川への一時的な流入であるか,定着であるのかを調査するため,異なる時期に試料を採取し調査した結果,継続的なESBL産生大腸菌の検出を認める地点が確認できた.また,薬剤感受性検査の結果,そのうち67%の株がキノロン系抗菌薬にも耐性を示していた. 次年度も採取地点を増やし,引き続き環境調査を行うとともに,検出されたESBL産生菌の性状を詳細に解析し,その発生由来や病原性の有無について調査を行っていく.また,周辺地域のヒトから検出された株についても同様に解析を行うことで,関連性を調査する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響もあり,自然環境由来の試料サンプリングが十分に確保できていないため,やや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
自然環境調査は次年度以降も経年追跡とし,検出されたESBL産生菌の性状を解析することにより,その発生由来や病原性の有無,伝播能力の高いプラスミドを保有しているのかなど,ヒト生活圏にある遊水域に拡散するESBL産生菌の特徴を調査する.また,同時期にヒトから検出されたESBL産生菌の特徴と比較する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策のため,研究が遅れており人件費の支出がなく,次年度使用が生じた.繰越額は,今年度に人件費として充てる予定である.
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