2022 Fiscal Year Research-status Report
保全体制の構築に向けたタンザニアにおけるヒョウと人間の関係の変容に関する研究
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22K18092
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
仲澤 伸子 椙山女学園大学, 人間関係学部, 研究員 (80899998)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アフリカヒョウ / 赤外線センサーカメラ / タンザニア / 食性 / 活動パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は7月から9月にかけて、タンザニア連合共和国マハレ山塊国立公園(以下、マハレ)に渡航した。今回の調査の目的は、人間活動がヒョウをはじめとする動物相に与える影響の解明のための予備調査である。そこでまず、マハレ内において、ヒョウの食性調査及び赤外線自動撮影カメラを用いた動物相調査をおこなった。赤外線センサーカメラを用いた調査により、少なくとも4頭のヒョウが確認された。また、食性調査により、2017年までの調査に比べてげっ歯目の消費が高い可能性が示唆された。さらに、国立公園境界の近くに居住している人々を訪ね、野生動物の目撃情報や獣害の有無に関する聞き取り調査をおこなった。今後はこれらの情報を参考に、マハレ外での動物相調査をおこなう予定である。 また、2017年までに得られた赤外線センサーカメラを用いた調査の結果をまとめた。まず、ヒョウの活動パターンと、種レベルでもっともヒョウによる消費が多い鯨偶蹄目のブルーダイカーの活動パターンを比較した。つぎに、目レベルでヒョウによる消費がもっとも多い霊長目とヒョウの活動パターンの比較を試みた。マハレのヒョウが消費している霊長目は、その多くが樹上を利用する種であるという点で特徴的である。そこで、地上と樹上の両方に、世界線センサーカメラを設置し、地上を移動するヒョウの活動パターンと、樹上性霊長類が地上で撮影される時間帯、樹上で撮影される時間帯を比較した。以上の結果は、国際学術誌に提出し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年3月~2022年4月にかけて、日本人研究者が現地調査に行けない状況が続いた。そのため、2022年7月の今回の渡航は研究チームとしても2年ぶりの訪問であり、現地の状況に対応することを最優先に行動する必要があった。特に、調査許可の取得にかかるプロセスが2年の間に大きく変更されており、現地機関でもまだ混乱した状況であったことから、現地調査機関と連絡を取りながらすすめていく必要があった。また、オンライン化が進められていたものの、現地の通信事情からつながらないことが多々あったことから、たびたびオンライン環境がある地域まで移動する必要があった。このように、2ヶ月半の現地調査の半分ほどを調査許可取得のための対応に使わざるを得なかった。 調査許可取得に時間を要したことで、想定よりも国立公園外での調査をすすめることができなかった。そのため、野外調査の進捗状況としては、当初の想定よりも遅れていると言わざるを得ない。 しかし、その一方で当初予定していた関連データの分析は想定通りにすすめることができた。公園内のヒョウと獲物の活動パターンをまとめた研究結果は今後の公園外調査を進めるうえで非常に参考になる。そのため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査機関の助力のもと、調査許可の取得手順は2022年度の渡航で確立できたため、本年度からは滞りなく調査を実施できると考えられる。 そこで、まずは野外調査として国立公園の境界から村にかけて赤外線センサーカメラを設置し、撮影された動物種を同定する。また、同地域において動物の足跡や糞といった痕跡を探して同定することで、村周辺における動物相を明らかにする。 さらに、国立公園境界の近くに住む人々に聞き取り調査をおこなうために、調査対象者の選定、調査アシスタントのトレーニング、アンケート項目の確認のための予備調査をおこなう。 国立公園外では、住居や畑の分布を明らかにするために無人航空機(ドローン)を飛ばす予定であるが、そのためには現地調査機関などから許可を得る必要がある。今までに申請者がドローンの飛行許可の取得を試みたことはないことから、おそらく許可取得のために時間がかかると考えられる。そのため、まずは現地研究機関を訪問し、本研究計画に含まれているドローンの使用等に関して相談する。さらに、今後ドローンを用いた調査をおこなう際に必要な調査許可申請書類やそのプロセスを明らかにする。 許可が取れ、準備が整い次第、国立公園の境界から村にかけてドローンを飛ばし、住民による土地利用様式を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2022年度は、年度内で終了する他の科研費から効率的に利用したため、当該助成金が生じた。 2023年度は、5月から6月にかけて約1か月、タンザニアでの野外調査をおこなう予定である(航空券:200千円、滞在費:300千円、機材:400千円)。さらに、調査許可は1年更新であり、2022年7月に取得した調査許可が7月には失効する。そのため、7月以降に調査許可の更新をおこなう必要がある(タンザニア野生動物研究所:200千円、タンザニア科学技術委員会:50千円、在留許可:50千円)。調査許可が取れ次第、年末までにもう一度野外調査を2か月間おこなう(航空券:200千円、滞在費:600千円)。得られたデータを保存するために、大容量SSD(100千円)を購入する。さらに、データの分析のために、ノートパソコン(150千円)を購入する。
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