2022 Fiscal Year Research-status Report
戦前キリスト教信者からみる米国統治期沖縄の復帰運動
Project/Area Number |
22K18096
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岡本 直美 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (20906630)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | キリスト教徒 / ライフヒストリー / 沖縄戦後史 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前の沖縄でキリスト教信者となった人びとが、戦後沖縄の社会運動にいかなる影響を与えたのかを明らかにするものである。そして特に、米軍統治下の沖縄で展開された「祖国復帰運動」(以下、復帰運動)に与えたインパクトを検討することを目指す。 本研究では、①運動主体とキリスト教との関係、②運動主体のルーツと越境的ネットワークの構築に着目することで、沖縄の自治や自己決定を訴える声が、沖縄の内部だけで形成されたものではなく、むしろ外部との繋がりの中で醸成された点を照射する。さらに、これまで戦後の時間軸のなかで議論されてきた復帰運動を、運動主体の戦前経験と連ねて考察することで、復帰運動が対米軍占領に限定された問題ではなく、日本国家の近代化プロセスに関わる問題として射程を拡大する。 上記の研究目的に基づいて、2022年度は、(1)沖縄県伊江島における住民の移動経験と土地の持つ歴史の調査・分析、(2)沖縄のキリスト教徒関係資料の収集・分析を行った。特に(1)に関して、伊江島の土地闘争を牽引した真謝区に注目し、同地が伊江島の中でも他区と比較して開拓地としての性格が強い点を字誌や住民資料等で明らかにした。この成果を論文にまとめ発表した(「人びとの移動と土地闘争」『MFE』第3号、2023年)。そして、ここで得られた成果が、伊江島特有の事例であるとともに、沖縄島の他の地域とも共通する側面がある点を確認した。そこで、沖縄戦後史における沖縄の地域史の再検討をするシンポジウムも企画・開催した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収集済みの資料に関しては、整理・分析を予定通り実施することができた。特に、沖縄県内の土地闘争史関連資料をまとめた。 国内調査、特に沖縄での現地調査は、主として沖縄県立図書館等の公共施設にて行った。本研究では文献資料の調査だけでなくライフヒストリーの観点から現地調査に重点を置いている。しかしながら、人びとが集う場、特に教会のような高齢者の集う場所で調査をすることは、コロナの影響が続く2022年度は難しい状況であった。そして、海外調査(ハワイ)もコロナ禍の影響で2023年度以降に延期した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降は、これまで十分に行えなかった現地調査に重点を置きたい。特にハワイにおける沖縄系移民とキリスト教との関連について、現地調査を行う。そして、国内では、沖縄のキリスト教会で現地調査し、聞き取り調査を実施する。
|
Causes of Carryover |
2022年度は、コロナ禍の影響のため、現地調査を十分に行えなかった。当初の予算計画において旅費が大部分を占めていたが、特に海外調査を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。2023年度は2022年度に行えなかった海外調査も実施する。
|