2023 Fiscal Year Research-status Report
中東の国家間対立と「公的イスラーム」の役割:国家の正統性と法学者ネットワーク
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22K18097
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
池端 蕗子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 准教授 (70868249)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 公的イスラーム / ウラマー / 国家間対立 / 国家の正統性 / イスラーム法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀半ば以降のグローバルな宗教復興以降、宗教的な規範が政治と密接に結びついてきた。特に、現代中東・イスラーム諸国において、宗教的な規範は内政・外政双方と密接に結びつき、国家間関係や国際的な合意形成にも影響を及ぼしている。これらの国々では、イスラーム性を称揚する場合でも抑制する場合でも、国家の側が「正しいイスラーム」や「公的な教義」を唱えて正統性を強化する傾向が強い。本研究はこうして国家が形成する規範を「公的イスラーム」と名づけ、それが国家の正統性強化にどの程度有効に働いているのか、国家間の緊張・対立・融和の国際関係の動態においてどのような作用をしているのかを考究するものである。 本年度は、さまざまな視点から「公的イスラーム」の事例研究を行い、学会等での口頭発表を行った。2023年7月にイギリスで開催された英国中東学会(BRISMES)では、国際的なウラマー・ネットワークが各国の公的イスラームとどのような関係にあるか理論的枠組みについて発表を行った。同じく7月にアルゼンチンで開催された世界政治学会(IPSA)では、イランの人口管理政策における公的イスラームの変容の事例についてペーパーの執筆と口頭発表を行った。11月にマレーシアで開催された国際会議では、ハラール産業に関する公的イスラームと、その国際的な合意形成の事例について分析を行い、口頭発表を行った。いずれの発表に対しても、参加者から有益なフィードバックを得ることができた。 2024年2、3月にはヨルダンにてフィールドワークを行い、モスクやキリスト教会、宗教系出版社などの宗教施設においてインタビュー調査と資料収集を行った。ガザ・パレスチナに連帯を示す社会運動が頻繁に行われていたため、そこで動員される宗教アイデンティティについてもインタビュー調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の国際学会にて英語での口頭発表を行い積極的に成果公開に努め、有益なフィードバックを得ることができたほか、ヨルダンでのフィールドワークでもインタビュー調査など現地でのデータを得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は英国中東学会(BRISMES)および中東研究協会年次大会(MESA)などの国際学会での口頭発表を予定している。また現代中東諸国における公的イスラームについてこれまで行ってきた分析を論文化し、学術雑誌への投稿を行う。データの精査のため、サウディアラビアおよびヨルダンでもインタビュー調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度内に執行が間に合わなかった書籍があったため、2024年度分から執行を行う予定である。
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