2023 Fiscal Year Research-status Report
Perceived risk of over- and under-tourism: a case study on a garden tourism project in Tokyo
Project/Area Number |
22K18098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下山田 翔 東京大学, グローバル教育センター, 特任講師 (20809280)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 庭園観光 / ガーデンツーリズム / オーバーツーリズム / アンダーツーリズム / リスク認識 / COVID-19 / 観光客の分散化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東京都内の庭園観光計画実施主体が、オーバーツーリズムとアンダーツーリズムのリスクをどのように認識しているのかを明らかにすることである。国土交通省が主導する庭園間交流連携促進計画、通称「ガーデンツーリズム登録制度」に2020年に新規登録された東京都郊外部の庭園観光計画の協議会メンバーを対象に、A)計画構成庭園の観光客誘致状況、B)構成庭園の観光キャリング・キャパシティーに関する認識、3)構成庭園間、ならびに構成庭園と都心部の人気観光地の間での観光客を分散させる必要性に関する認識を調査している。 令和4年度は、当該観光計画の構成庭園から2019~2021年度の来園者数データを提供してもらい、収集した量的データを統計手法を用いて分析したことで、調査項目Aを明らかにすることができた。多くの庭園は来園者数を大幅に減らし、COVID-19の打撃を受けてアンダーツーリズムに陥ったものの、少数の庭園は2019年度よりも多くの来園者を獲得していることが明らかになった。また、当該庭園観光計画の実施主体計17名に対してインタビュー調査を実施することで、調査項目のBとCについてのデータも収集することができた。 令和5年度は、インタビューから収集した質的データを、主題分析という手法を用いて分析した。その結果、郊外部の庭園管理者は、オーバーツーリズムを自分たちの庭園で起こりうるリスクとして認識していないことが明らかになった。反対に、アンダーツーリズムを長年直面し続けているリスクとして認識していることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に示した3年計画に従い、令和4年度中に量的データの分析を、令和5年度中に質的データの分析を完了することができた。さらに、令和5年度中に1本の論文を国際誌に投稿することができ、現在査読審査中である。令和6年度にその論文をアクセプトさせ、さらにもう1本の論文を投稿する予定である。おおむね計画通りであるが、分析された質的データを解釈する際の理論的視座を決める作業に、予想以上に時間がかかっており、若干遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画最終年度である令和6年度は、論文の執筆・投稿・修正作業に注力する。現在、庭園観光実施主体のオーバーツーリズムとアンダーツーリズムに関するリスク認識について執筆した1本の論文を「International Journal of Tourism Research」に投稿済みであり、査読結果を受けて必要に応じて修正を施し、今年度中にアクセプトさせることを目指している。 さらに、オーバーツーリズムとアンダーツーリズム防止手段としての観光客分散についてまとめたもう1本の論文を執筆中であり、「Sustainability」に投稿予定である。執筆にあたり、分析された質的データを解釈するための理論的視座を決める必要があり、カルチュラルツーリズムの知見を援用すべく文献調査を実施している。 研究成果を論文としてまとめられるステージに移行したため、本研究では明らかにできなかったことも浮き彫りになってきた。それらを今後の研究課題として整理し、次の研究計画に組み込んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
前年度は主に国際学会への参加にかかる費用を科研費から支出したが、円安や物価の高騰を危惧し、節約を心掛けながら科研費を執行した結果、若干の次年度使用額が生じた。今年度は論文の発表に注力するため、英文校正サービスの利用やアクセプトされた論文のオープンアクセス化に多額の費用が生じると見込んでいる。次年度使用額と今年度請求額を合わせて、これらの費用を賄っていく予定である。
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