2023 Fiscal Year Research-status Report
人口減少地域における巡礼ツーリズムの高まりによる霊場空間の再編に関する研究
Project/Area Number |
22K18108
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Research Institution | Meio University |
Principal Investigator |
卯田 卓矢 名桜大学, 国際学部, 上級准教授 (20780159)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 巡礼 / ツーリズム / 人口減少 / 札所 / 文化遺産 / 観光資源化 / 観光地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は人口減少地域において復興あるいは創出された巡礼地を対象に、巡礼ツーリズムの高まりによる「霊場空間」の再編を明らかにすることである。本年度は、(1)戦後の巡礼の歴史的展開を地方巡礼地の開設と出版社の関係から分析する、(2)人口減少地域における巡礼地を対象にモノやヒトが限られていく中での巡礼地の存続のあり方を検討する、(3)観光振興および文化遺産の継承を目的とした「巡り」の成立過程と地域の再編を分析することを目的とした。 本年度の研究について、(1)では新たに収集した図書の精読や関係者への聞き取りから、地方巡礼地創設に関わる「仕掛け人」とそれをガイドブックの刊行という点から支えた出版社の動向を戦後の巡礼ブームをふまえ明らかにすることができた。(2)では山形県の巡礼地を対象に、関係者への聞き取りや景観観察、資料収集等を実施した。山形県は人口減少が顕著で、巡礼者数も減少傾向にある。また、札所管理者はその多くが後継者不足、脆弱な生活基盤などの課題や不安を抱えていた。一方、県は近年「精神文化」としての巡礼地を強調する取り組み(観光振興策)を開始しており、巡礼地側は期待と不安が交錯する状況であることがわかった。(3)では人口減少にともない集落管理が困難になった文化遺産(美術工芸品)の継承を目的に「公開」および観光振興を進めている地域を対象に現地調査を実施した。その結果、住民の中には公開によって来訪者と交流が生まれ、文化遺産の継承に自覚的となる者がいる一方で、管理の負担自体は軽減されないと感じる者もおり、文化遺産継承の複雑な現状を理解することができた。 以上の成果のうち、(1)は所属大学の紀要に投稿した。(2)(3)は調査結果をまとめ、次年度に論考を発表する予定である。また、日本の宗教の現状および地域差を視野に入れた授業開発に関わる論考を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究活動がおおむね順調に進展している理由は、上記の(1)(2)(3)の資料収集と現地調査が順調かつ効率的に進み、資料整理や論文構想に費やす時間が確保できたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はこれまでの研究活動の成果を論文としてまとめるとともに、本年度に新たに実施した地域の追加調査を行い、現状の理解をさらに深めたい。また、そのうえで本研究の目的である人口減少地域における巡礼地とツーリズムとの関係、それによる再編の特徴を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
当該年度は現地調査が想定よりスムーズに進んだことで、調査期間を短縮することができた。そのため、旅費等が低減することになった。次年度は当該年度の残額分を追加の調査および新規の調査に充てる予定である。
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