2023 Fiscal Year Research-status Report
映画研究による観光客のまなざし論の展開―観光表象研究を軸に
Project/Area Number |
22K18109
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
須川 まり 流通経済大学, 社会学部, 准教授 (10814832)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 地域表象 / ランドマーク表象 / 京都映画 / よそ者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は映画作品におけるゲストとホストそれぞれの目線の観光表象の違いを明らかにするために、登場人物の立ち位置と作中に登場する観光行動および観光地/ランドマーク表象の研究を進めている。2023年度は、ゲスト目線の観光表象との違いをより明確にするために、ゲストとホスト以外のよそ者や都市開発者という、第三の立ち位置にいる登場人物にも注目した。具体的には以下の二点が挙げられる。 前年度の京都観光に関する調査結果をもとに、1990年代以降の映画を中心に作中で登場人物が京都観光する場面を考察した。京都観光に関連する映像作品をランドマーク表象および登場キャラクターの立ち位置(ゲスト、ホスト、よそ者など)に分類したうえで、ゲスト、ホスト以外のよそ者(学生)のまなざしの存在意義について、業績①で発表した。 ホストと都市開発者目線の映画の事例として、大規模な都市開発である「鹿島開発」によって地域住民の生活環境が大きくかわっていく過程とその後を描いた映画作品をとりあげた。①開発者目線、②ホスト目線のそれぞれの地域表象の特徴を作品分析し、業績②で発表した。 業績①(共著)須川まり、2024年「観光都市化がおよぼす京都表象の変遷-京都に生まれつつある新たな都市表象」堀野正人/谷島貫太/松本健太郎 編著『都市と文化のメディア論――情報化するコンテンツ/ツーリズム/トランスナショナルコミュニケーション』、ナカニシヤ出版、67-78頁。 業績②(分担執筆)須川まり、2024年「『ちばらき』は映画に欠かせない――フィルムコミッションと鹿島開発」流通経済大学共創社会学部 編、西田善行/福井一喜 責任編集『大学的ちばらきガイド――こだわりの歩き方』、昭和堂、201-213頁。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究テーマに関連する監督の新作映画の発表や小津安二郎関連の映画イベントが2023年度に実施されたため、これまでの研究計画に以下の研究調査を追加した。 前年度に新たな課題となった小津安二郎研究については、2023年に生誕120周年を迎え様々な小津関連の映画イベントの実施や出版物が発行されたため、それらの情報整理を行っている。 研究計画に挙げていた日本を描いた海外の監督作品について、2023-2024年に新作がいくつか公開されたため、それらを含めて、監督の作家性および観光客視点の日本表象について、再考察を行っている。 COVID-19の感染拡大が落ち着き、オンライン・ツーリズムの需要が低下したため、改めて本研究テーマである視覚媒体による疑似観光体験について、現状の観光事情を踏まえて見直しを図っている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、ホスト、ゲスト目線の観光表象に関する考察を進めているが、それらの研究をより発展させるために、よそ者および移動する者の目線を追加する試みを行っている。よそ者目線の京都映画や都市開発者目線の地域映画については2023年度の研究業績として成果を発表したが、今後は前年度の課題に掲げたように、旅・観光に関する映画を整理するにあたり、移動する者および移動媒体の表象を描いた映画作品も分析対象として補完的に追加する予定である。 特に、日本のマスツーリズム時代の移動媒体を描いた作品も研究対象に追加する。これらの旅・観光・移動に関する映画を総合的にとらえ、小津安二郎監督作品を出発地点として、いかにゲスト・ホスト目線の観光表象が継承および展開されているのか、研究調査を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
初年度に新型コロナウイルスによる影響で思うようにロケ地の視察調査に赴けなかったことから全体的に研究の進行が遅れていることが要因にある。 また新たに浮上した研究課題に対し、視察調査に赴ける段階まで文献資料整理等が終わっておらず、時間がかかっていることが影響している。 主に文献資料調査・整理・分析に時間をかけてきたが、脱コロナ化で減少しつつあるオンラインツアー調査にも早めに取り組むことで遅れを取り戻したいと考えている。
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