2022 Fiscal Year Research-status Report
The Politics and Norms of Sexuality in Refugee Protection
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22K18118
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
工藤 晴子 神戸大学, 国際文化学研究科, 講師 (20910037)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 難民・強制移動 / クィア移住 / 第三国定住 / 庇護 / セクシュアリティ / ジェンダー / アメリカ合衆国 / 国境 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、(A)第三国定住レジームとセクシュアリティの規範の関連性と、(B)国境における庇護希望者と「LGBTIQ+難民」の保護の関連性について研究を進めた。 (A)に関しては、冷戦期から現在までのアメリカにおける庇護政策と第三国定住政策に関する資料・データを収集、分析し、特に2017年以降の難民保護のポリティクスにおける現代的な特徴をとらえることを試みた。9月には、ニューヨーク州ニューヨー市とカリフォルニア州オークランド市を訪れ、性的マイノリティ移民の支援団体、庇護希望者支援団体、各州の第三国定住コーディネーター、第三国定住難民受け入れ団体、国連移住機関(IOM)等の訪問・聞き取りや、NY市立図書館、GLBT歴史社会資料館、エリス島移民博物館、エンジェル島移民博物館での資料収集を行なった。また、カリフォルニア大学バークリー校の難民法学研究者らとの意見交換を実施した。(B)に関しては、トランプ政権下の移民政策に焦点を当て、国境での庇護希望者の制限政策とCOVID-19対策としての国境政策についての資料を分析し、性的マイノリティの庇護申請へのアクセスと公衆衛生を軸とした排除の歴史と接続する議論を展開した。また、日本国内における性的マイノリティの難民認定について、不認定処分の取り消し(大阪地方裁判所)が命じられるなどの新たな展開が生じたため、関連資料の収集や支援団体への聞き取りを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究課題の初年度にあたるが、おおむね順調に進展している。その理由として、特にフィールド調査を予定通り実施し、関係者への聞き取りと資料収集を計画通りに進めることができたことがあげられる。また、国境の庇護政策という部分については、研究論文としてまとめ、公開する機会を得たことで、成果発表についても予定通り進めることができているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、今後も当初の研究計画通り、アメリカをフィールドに調査を進める。2023年度以降は、調査地をテキサス州やニューヨーク郊外へと広げる予定であり、調査対象者へのアクセスを含めたフィールドワークの進展にはやや時間を要することが予想される。そのため、幅広いアプローチで早めに調査対象者への連絡を進めていく予定である。また、【研究実績の概要】に記したとおり、日本国内における性的マイノリティの難民認定についても今までにみられなかった新たな展開が生じている。研究課題に包括的に取り組み、また相対的な分析視角を維持するためにも。日本国内の状況についても研究の射程にいれていきたい。
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