2023 Fiscal Year Research-status Report
近代日本のローカルアーキテクト・更田時蔵の建築技術に関する研究
Project/Area Number |
22K18135
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
大嶽 陽徳 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 助教 (20782551)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 建築史 / ローカルアーキテクト / 更田時蔵 / 建築技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近代日本のローカルアーキテクト・更田時蔵による鉄筋コンクリート造(以下、RC造)および組積造の建築作品の図面資料を中心に、技術的な側面の分析を行い、更田時蔵の建築技術のオリジナリティと近代日本の建築技術のローカリティの一端を明らかにすることを目的としている。 この目的を達成するために、まず、更田時蔵によるRC造および組積造の建築作品に関する図面資料や現存作品資料を整理し(STEP1)、次に、それらと中央で定められた技術規準を比較して、近代のローカルアーキテクトによる中央の建築技術の導入態度を明確化し(STEP2)、最後に、大正~昭和初期に同じ地域で設計された、RC造および組積造の建築と比較することで、建築技術に関する更田時蔵のオリジナリティや近代日本のローカリティを明らかにする(STEP3)。 令和5年度は、設計図書を所有している「フケタ設計」の保管状況を鑑みて、まず、更田時蔵による大正~昭和初期のRC造および組積造の現存作品(『旧大内村役場』、『旧大谷公会堂』、『T氏代議士邸』)を中心にSTEP1に取り組み、作品の名称、所在地、用途、規模と共に、図面の種類と点数を整理した資料リストを作成した。次に、『T氏代議士邸』(1932年設計、組積造の壁に木造小屋組、一部RC造)を対象として、STEP2~STEP3まで取り組み、上述のSTEP1も含めて次の2点の成果を挙げた。第一に、資料について、設計図書5点、竣工時の写真2点、完成予想パース1点があることを明らかにした。この時、大谷石の施工性から、アール・ヌーボー風の彫刻と幾何学的な彫刻を組合せた立面として設計されたことも解明した。第二に、RC造の箇所に関しては、中央の技術規準を概ね遵守しているのに対し、組積造の箇所に関しては、それらを満たしておらず、技術的には宇都宮市の農村集落の大谷石建造物に近いことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、近代日本のローカルアーキテクト・更田時蔵による鉄筋コンクリート造(以下、RC造)および組積造の建築作品の図面資料を中心に、技術的な側面の分析を行い、更田時蔵の建築技術のオリジナリティと近代日本の建築技術のローカリティの一端を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、まず、更田時蔵によるRC造および組積造の建築作品に関する図面資料や現存作品資料を整理し(STEP1)、次に、それらと中央で定められた技術規準を比較して、近代のローカルアーキテクトによる中央の建築技術の導入態度を明確化し(STEP2)、最後に、大正~昭和初期に同じ地域で設計された、RC造および組積造の建築と比較することで、建築技術に関する更田時蔵のオリジナリティや近代日本のローカリティを明らかにする(STEP3)。 これまで、STEPごとに以下の成果を挙げている。まず、STEP1については、更田時蔵による大正~昭和初期のRC造および組積造の現存作品(『旧大内村役場』、『旧大谷公会堂』、『T氏代議士邸』)を中心に、作品の名称、所在地、用途、規模と共に、図面の種類と点数を整理した資料リストを作成しており、『旧大内村役場』の実地調査を除いて概ね完了している。次に、STEP2とSTEP3については、STEP1に基づいて、組積造の現存作品(『旧大谷公会堂』、『T氏代議士邸』)を先行して進めており、組積造に関する、ローカルアーキテクトによる中央の技術規準の導入態度や更田時蔵の技術的なオリジナリティについて解明できている。 これは、令和6年度にRC造の現存作品である『旧大内村役場』について、実地調査による鉄筋探査を行なったうえで、これまでと同様の分析方法でSTEP2とSTEP3に取り組むことで、交付申請書に記載の目的を達成することが可能である状況であることから、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、近代日本のローカルアーキテクト・更田時蔵による鉄筋コンクリート造(以下、RC造)および組積造の建築作品の図面資料を中心に、技術的な側面の分析を行い、更田時蔵の建築技術のオリジナリティと近代日本の建築技術のローカリティの一端を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、まず、更田時蔵によるRC造および組積造の建築作品に関する図面資料や現存作品資料を整理し(STEP1)、次に、それらと中央で定められた技術規準を比較して、近代のローカルアーキテクトによる中央の建築技術の導入態度を明確化し(STEP2)、最後に、大正~昭和初期に同じ地域で設計された、RC造および組積造の建築と比較することで、建築技術に関する更田時蔵のオリジナリティや近代日本のローカリティを明らかにする(STEP3)。 現在までの進捗状況で述べたとおり、最終年度である令和6年度には、RC造の現存作品の『旧大内村役場』について、実地調査による鉄筋探査を行なったうえで、STEP2とSTEP3に取り組むことで、交付申請書に記載の目的を達成する予定である。 さらに、これまでの取り組みのなかで、近代日本のなかでのローカルアーキテクトの建築技術の位置付けが可能であることを認識しているものの、日本という枠組みを超えた国際的な視野のなかでの位置付けの必要性も感じている。RC造および組積造といった近代に日本が輸入した建築技術の発祥の地である西洋の建築に関する分析も実施し、より実りのある研究成果を得る予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度までは、設計図書を所有している「フケタ設計」の保管状況や移築解体中である『旧大谷公会堂』の工事状況などを鑑みて、組積造の現存作品である『旧大谷公会堂』および『T氏代議士邸』を中心に研究を進めてきており、組積造に関する、ローカルアーキテクトによる中央の技術規準の導入態度や更田時蔵の技術的なオリジナリティについて解明してきた。これは、資料や現存作品の状況に応じて、更田時蔵による大正~昭和初期の鉄筋コンクリート造(以下、RC造)および組積造の建築作品のうち、組積造の現存作品に限定して、STEP3まで先行して取り組んでいる状況である。 こうした進捗状況から、更田時蔵による大正~昭和初期のRC造の現存作品である『旧大内村役場』については、次年度(令和6年度)に研究を行う予定である。そのため、次年度に『旧大内村役場』の鉄筋探査等の実地調査を業者へ依頼して行ったうえで、大学院生の研究協力者を得て図面化を行う予定であり、使用額が生じている。
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