2022 Fiscal Year Research-status Report
好気性細菌の十二指腸から膵臓がんへの移動現象のメカニズム解明
Project/Area Number |
22K18175
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白井 宏明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准訪問研究員 (60838796)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 数理モデリング解析 / 流量 / 走化性 / 膵臓 / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
十二指腸から膵臓への膵管内の好気性細菌の移動現象の数理モデリングを構築した。膵管は、簡単のため、均一半径の円柱形を仮定し、モデルには、微生物の運動性、低CO2濃度への走化性、中性方向へのpH走性、胆汁・膵液による流れを含めた。また、二酸化炭素、プロトン、および重炭酸輸送も、移流拡散方程式によりモデル化した。文献から得た適当な初期条件・境界条件のもと、COMSOLを用いて有限要素法により数値解を得た。まず、イオン・二酸化炭素の輸送の数値解を得、その結果を用いて、微生物の輸送のシミュレーションを行った。また、pH勾配下での走性の観察に向けて、二層流により濃度勾配を実現できるマイクロ流体デバイスをPDMS(ポリジメチルシクロキサン)を用いて作製し、pHをブロモチモールブルー溶液を用いて観察した。
マイクロ流体デバイス内に酸と塩基の二層流を形成し、流路内にpHの勾配が観察された。pH勾配下でGFPの大腸菌を、酸もしくは塩基側から含めた場合、微生物の走性により酸から弱塩基側へと偏った分布が観察された。 また、数理モデリングによれば、十二指腸と膵管の合流部には、急なpH勾配や二酸化炭素濃度勾配が形成されていることが明らかとなった。この勾配下でのpH走性・低CO2へ向かう走気性が、運動性による侵入をやや加速させていることが明らかとされた。しかし、流量が一定の場合には、細菌の運動性に加えて、走気性・pH走性の影響を含めた場合であっても、実際の胆汁・膵液の流量を用いてシミュレーションにより計算される侵入さは数mmであり、すい臓へ侵入するためには、約5 mmである十二指腸の乳頭部を超えることが必要であり、ほかの影響も侵入に関与していると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵管内の流量が均一な場合における細菌の移動現象についての理解が得られたため。また、マイクロ流体デバイスを用いてpH勾配の観察がされたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
デバイス内に作成したpH勾配において、勾配下での走化性の分布について、微生物の種類の違い(E.coliとPseudomonasなど)を比較する予定である。また、膵管内の流れが、膵管を覆う括約筋により時間と共に変化する場合について、数理モデルを用いて解析をする予定である。
|
Causes of Carryover |
数理モデリングによるシミュレーション解析を中心としたため。本次年度使用額は、令和5年度の実験のために必要な試薬購入に充てる。
|
Research Products
(3 results)