2022 Fiscal Year Research-status Report
過飽和酸素水を用いた新規完全液体換気システムの確立:急性肺障害の治療に向けて
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22K18189
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
垣内 健太 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (30875422)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 完全液体換気 / 肺洗浄 / 酸素運搬体 / 溶存酸素 / ARDS |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに,過飽和溶存酸素水からの気泡化を抑制する工夫をすることで高い酸素量を運搬できるTLVシステムを構築した.さらに,モデル肺を用いたin vitro試験にてラットの酸素消費量と同程度の酸素を肺に運搬できることを確認した.一方で,in vivo試験では,わずかに気泡化した酸素ガスが気道に蓄積して吸水時(陰圧時)に気道が狭窄するchoke現象が起きている可能性が示唆された.これにより,in vitro試験と比較して40%程換気量が低下していたため,in vivo試験における最適な換気条件の探索を目標としている. 2022年度は,choke現象の直接的な原因である吸引圧を低下させることで換気量がどのように変化するかをin vivo試験で評価した.その結果,換気量と吸引圧(陰圧度)に正の相関が確認され,吸引圧を増加させる(0 cmH2Oに近づける)ことで換気量の回復が確認された.しかし,換気量が増加したのにも関わらず血中酸素分圧の回復は小さかった.これは,choke現象が緩和されたことにより換気量が増加したが,肺胞での酸素供給が改善しなかったことを意味しており,過飽和溶存酸素の気泡化に伴い肺実質(細い流路部)の1部が閉塞している可能性が示唆された.この場合,choke現象を緩和しても最終的な目標である血液の酸素化の維持には寄与しないため,新たな対策が必要となった. 一方,平行して実施していた液中酸素含量測定法に関する実験において,生体への毒性が低く溶存酸素量が高い液体材料を見つけた.試験的に,水と本液体材料を酸素バブリング下で混合させたところ,ある条件下において,高い酸素含量を示す液体材料になることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,choke現象を評価できるモデル肺の作製(in vitro試験)を目的としていたが,最小限のin vivo試験でchoke現象を緩和し分時換気量を増加させる換気条件の傾向を確認できた.しかし,choke現象以外の課題も見つかり研究計画を1部修正して実験を進める必要が出てきた.一方で,平行して実施してきた新規酸素含量測定を用いた実験において,新しい知見が得られたため学術論文および学会発表にて報告を行った.予定していた実験方法とは異なるが,実験を進める上で重要な知見が得られたため,計画通り進んでいると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,過飽和溶存酸素水を用いたTLVシステムの実験と新規液体材料の実用性評価の2軸で実験を進める.過飽和溶存酸素水を用いたTLVシステムの実験では,初めに,吸気圧を最大限まで増加させた(0 cmH2Oに近づけた)際に分時換気量および血中酸素分圧にどのような変化が生じるかを確認して実験の方向性を再度議論する.一方,新規液体材料の評価に関しては,調製条件 vs. 酸素含量・酸素含量保持時間を評価して,TLVに応用できる液体材料になるかを精査する.当初の実験計画には入れていなかったが,関連する実験として研究資金の1部を本実験に使用する予定である.
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Causes of Carryover |
本年度、特注の加圧容器を購入する予定であったが、別の予算にて購入することができたため、計上分の約30万円、2023年度に繰り越した。本予算は、新規材料の開発にしようする高速攪拌機の購入に充てる予定である。
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