2022 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞へ侵入する細菌毒素を利用した病原タンパク質分解技術の開発
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22K18198
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
宮下 慎一郎 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (20883292)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ボツリヌス神経毒素 / 凝集タンパク質 / ドラッグデリバリー / DDS / VHH抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、研究代表者はボツリヌス神経毒素 (BoNT) を基にしたキメラ毒素 (ciBoNT) を用いることにより、アルパカ由来 VHH 抗体を神経細胞内に送達することに成功した。本研究の目的は、神経細胞において恒常的に産生される内因性病原タンパク質を標的とした分解促進技術の開発である。 本年度は、抗体送達の効率化を目的として、新たに2つのciBoNTキャリアーの開発を行った。BoNTおよびciBoNTキャリアーは3つのドメインから構成される。N末端側から酵素活性ドメイン (LC)、トランスロケーションドメイン (HN)、そして受容体結合ドメイン (HC) である。プロトタイプciBoNTはX型LC-HNおよびA型HCから構成される。 まず、神経細胞への結合に必須であるHCの候補を探索した。ボツリヌス菌培養上清から精製したCD型BoNTとA型BoNTをマウスへ投与すると、ほぼ同程度の投与量で筋肉麻痺を示した。この結果から、CD型BoNTのHC (HC/CD) は効果的に神経細胞に結合することが考えられた。大腸菌を用いて、HC/CDを含むciBoNTの発現を試みたが、分解産物として確認された。 次に、新たなLC-HNドメインの候補探索を行った。2019年、PMP1がハマダラ蚊を標的とするBoNT-like毒素であることが報告された。PMP1のLCに点変異導入し酵素活性を不活化し、大腸菌組換え発現系によりciBoNT/PmA (LCHN/PMP1-HC/A) を発現し精製した。マウスにciBoNT/PmAを腹腔内投与すると神経麻痺症状を呈した。このことから、PMP1ドメインはciBoNTキャリアーに不適であることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新たに2つのキメラ毒素ciBoNTの作製を試みた。大腸菌組換え発現系において様々な発現条件を検討したが、CD型HCを含む安定なciBoNTは発現しなかった。BoNT-like毒素であるPMP1のLCHNドメインは酵素活性を不活化したにも関わらずマウスに毒性を示した。以上の結果から、抗体送達キャリアーとしてのciBoNTの評価が順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
病原タンパク質であるα-synuclein、TDP-43 あるいは SOD-1などを標的とする。この病原タンパク質に対する抗体やペプチドをキメラ毒素ciBoNTに連結し、組換えタンパク質として発現、精製する。病原タンパク質を蓄積した培養神経細胞モデルを構築し、抗体送達効率および標的タンパク質の分解について検証する。 さらに、X型BoNTの不活化LCがなぜマウスに毒性を示さないかを明らかにするために、X型LCと相互作用する細胞内タンパク質について検証していく。
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