2023 Fiscal Year Research-status Report
人工DNAトレーサーによる流域の水・土砂動態の可視化
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22K18298
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
赤松 良久 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30448584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 遼平 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授(特命) (10814618)
愛知 正温 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (40645917)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | トレーサー / 人工DNA / 地下水 / 土砂還元 / 環境DNA / 海綿 / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度はDNAトレーサーの開発および海綿レシーバーの開発を実施した.詳細を以下に示す. 1)DNAトレーサー開発:野外環境へ投入可能,かつ低コストで大量作成可能な構成脂質を使用した2種類のリポソーム封入トレーサーの作成に成功した.新素材の表面は負に帯電しており,土砂透過型のトレーサー候補として利用できる可能性が示された.2種類のリポソーム封入トレーサーの外径は,それぞれ約5 μmと約11 μmで異なり,投入する環境や目的に応じたサイズを利用できる. 2)レシーバー開発:海綿に吸着したトレーサーを分析まで安定的に保存するための条件検討を,凍結保存および界面活性剤(塩化ベンザルコニウム)添加で行った.タンパク質分解酵素を用いた直接核酸抽出によるトレーサーの回収率は,未処理の12.5%に対し,凍結保存では26.5%,界面活性剤添加では9.6%であった.調査に使用した海綿の保存には回収率の向上の点から凍結保存が有効であることが明らかになった.また,新素材で開発したトレーサーの回収方法の検討を凍結(-20℃)および界面活性剤(0.1~1.0%SDS)処理で行った。トレーサーをろ過したガラス繊維濾紙からの回収率は凍結処理で4.1%、界面活性剤で3.8~4.6%であった.一方、海綿からの回収率は凍結処理で0.026%、0.1%SDSで0.101%と低かった.海綿へのトレーサーの吸着は強固であり,回収方法の検討を行う必要があることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低コストで大量作成可能な人工トレーサーの開発に成功するとともに,トレーサーを効率的に捕捉するための海綿レシーバーから効率的にトレーサーDNAを回収する手法も開発した.当初,計画していた野外での地下水・表層水への投入実験については天候の関係で,2024年4月の実施になったものの,研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
R6年度には開発した人工DNAトレーサーおよびレシーバーを用いて,野外において地下水・表層水に人工DNAトレーサーを投入し,下流域でレシーバーを用いて連続的にトレーサー濃度を計測することによって,トレーサーの到達時間により流達率や地下水流速を明らかにする.また,ダム下流に土砂還元のために設置した置土に人工トレーサーを投入し,出水後の置土流出後に下流の河床材料中に存在するトレーサー濃度を計測することにより,置土の到達の有無を明らかにする.
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Causes of Carryover |
R5年度の実施予定であった現地実験をR6年度に実施することとなったため,分析費用やトレーサー作成委託費用を次年度に持ち越した.
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