2022 Fiscal Year Research-status Report
逆バイアス効果が切り拓く蓄エネルギーセラミックスのフロンティア
Project/Area Number |
22K18308
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
保科 拓也 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (80509399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 博基 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (80422525)
安井 伸太郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40616687)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 蓄エネルギー / 誘電体 / 非線形材料 / セラミックス / カーボンニュートラル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の急激な加速を続けるエネルギー需要に応えるために蓄エネルギー材料の性能革新が必要不可欠である。その中でも特に蓄エネルギーセラミックスは、高温・高電圧下において電気化学キャパシタや種々の電池と比較して圧倒的に優れた安全性と信頼性を有する材料として強く期待されている。本研究では酸素四面体を主要な構成要素とするABO3+nMO2系化合物に着目し、電場印加に伴って誘電率が増加するユニークな非線形誘電応答(逆バイアス効果)を示す新規物質系を開拓する。申請者らが近年発見したABO3+nMO2系化合物における反強/フェリ誘電性のメカニズムの解明に取り組み、それによって得られる知見に基づいて、従来の蓄エネルギーセラミックスを凌駕する高蓄エネルギー密度と急速充放電性を共に備えた革新的な新材料を創製する。 該当年度は、新たなABO3+nMO2系化合物の探索に取り組み、主に以下の成果を得た。①CaTiSiO5に関して分極-電界特性の二重履歴(ダブルヒステリシス)を初めて観測し、同物質が反強誘電体であることを実証した。②SrTiGeO5が優れた逆バイアス効果を示す新しい反強誘電体であることを見出した(低電界下での比誘電率は35程度であるが、200kV/cmにおいて100程度の比誘電率を示すことがわかった)。③KNbSi2O7単結晶の作製方法を確立した。④KNbSi2O7のKサイト、Nbサイト、Siサイトを他の元素で置換することにより、残留分極値を5~40μC/cm2の範囲で制御できることが明らかになった。加えて、ある種の元素を置換すると、フェリ誘電的な分極履歴が得られた。 また、結晶構造解析、第一原理計算、分光測定などを相補的に駆使し、ABO3+nMO2系化合物が示すユニークな逆バイアス特性の起源の解明に向けた研究を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなABO3+nMO2系化合物の探索に取り組み、CaTiSiO5が反強誘電体であることを実証するとともに、第一原理計算によって反強誘電性の起源となる格子不安定性について明らかにしている。また、CaTi(Si1-xGex)O5の多結晶セラミックス試料において、逆バイアス効果に対する元素置換効果の解明に取り組んでいる。加えて、SrTiGeO5が優れた逆バイアス効果を示す反強誘電体であることを新たに見出している。KNbSi2O7に関しては、元素置換によって強誘電体からフェリ誘電体的な性質を示すような材料に変化させることが可能であり、その起源について調査している。研究計画どおり順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
ABO3+nMO2系化合物の組成変化によって新たな反強/フェリ誘電体材料を探索するとともに、本研究で既に見出されている材料の反強/フェリ誘電性のメカニズムを解明するための研究を行う。特にCaTiSiO5系に関してはCaTi(Si1-xGex)O5の単結晶試料の育成を行い、粒界効果などの外因性の効果を排除したより精密な物性評価を行う。また、誘電特性や分極特性の異方性を評価する。一方、KNbSi2O7系に関しては、電場印加下における誘電/分極測定、電場印加下における放射光Ⅹ線実験、第一原理計算を用いたフォノンダイナミクスに対する電場効果の計算を実施する。また、緻密なセラミックス試料を作製するためのプロセスを開拓し、100MV/m級の高電圧下での誘電特性ならびに絶縁破壊強度の評価を行う。これらを通して高いエネルギー密度を有する畜エネルギーセラミックス材料を開発する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により装置・消耗品の年度内購入ができなかったことに加え、当初予定していたよりも出張が制限されたことにより、次年度使用額が生じた。予定していた装置・消耗品の購入や出張機会の増加により次年度以降には適切に研究費を使用できるはずである。
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