2022 Fiscal Year Research-status Report
極低温高磁場下in-situ顕微分光装置の構築と電界誘起超伝導のラマン分光測定
Project/Area Number |
22K18317
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
張 奕勁 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (00866395)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 顕微分光 / ラマン分光 / 二次元物質 / 電界誘起超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、2021年度末に納入された超伝導時着付き無冷媒クライオスタットの振動対策を主に行った。顕微プローブを完成させ、室温にてクライオスタット内に配置した試料の顕微観察を行うことには成功したが、クライオスタットの冷却を開始すると、振動が大きく鮮明な顕微観察像を得られないことが判明した。調査したところ冷却時に使用するコンプレッサーの振動がクライオスタットに流入していることが大きな原因であることが分かった。まず、床を伝う振動の対策として防振ゴムを設置したところ、顕微観察像の振動が多少抑えられた。その他の振動流入源として、コンプレッサーとクライオスタットを繋ぐホースが考えられる。そのため、ホース自身の振動を防ぐ専用のアンチバイブレーションブロックの作製を依頼し、現在納品待ちである。 また、振動対策と並行して、ラマン分光測定を行うためのレーザー光源の整備を前倒しで始めた。本研究では532 nmと633 nmの二つの異なる波長をもつレーザー光源を用いて分光測定を行う計画である。本年度中に、633 nm光源を用いて分光光学系を完成させることができ、室温において遷移金属カルコゲナイドの顕微ラマン分光測定に成功した。特に本研究では偏光分解測定を想定しているが、直線偏光・および円偏光を自在に制御した測定も可能になっている。本光学系は、分光器本体を除いて全て自ら構築した。顕微鏡部分も光学素子を一つずつ組み上げている。そのため、532 nm光源の追加といった拡張が比較的容易に実現できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クライオスタットの振動対策は当初想定しなかった作業であったため、進捗状況に影響を与えた。コンプレッサーの振動について、クライオスタット購入前の打ち合わせでは業者から不要であるとの旨を説明されたが、実際にクライオスタットを稼働させたところ不可欠であることが分かった。また、アンチバイブレーションブロックの作製依頼をしたところ、人手不足と材料不足から納品が大幅に遅れることになった。 一方、光学系の構築を前倒しし、実際に偏光分解ラマン分光測定が行える状況になった点は、当初計画よりも大きく進展した点であると言える。 総じて、本年度の進捗はおおむね計画通りであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、アンチバイブレーションブロックの納品を待って顕微観察像の振動具合の変化を確認する。並行して、二次元物質MoS2を用いた電気二重層トランジスタの作製を始め、特に電界誘起超伝導の再現実験を進める。また、前年度に完成させた光学系に532 nm光源およびそれを用いたラマン分光測定を可能にするための光学素子を組み込む。
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Causes of Carryover |
今年度のうちに発注済みであるが、来年度納品となっている物品があるため。 また、納品の遅れが生じ装置作製の手順を変更したため、一部物品の調達を次年度に後ろ倒しにした。
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