2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of molecular crystals of catalytic engines driven by chemical reactions
Project/Area Number |
22K18333
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 肇 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90282300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石山 竜生 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00232348)
陳 旻究 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 准教授 (90827396)
関 朋宏 静岡大学, 理学部, 准教授 (50638187)
高見澤 聡 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (90336587)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 有機結晶 / 分子機械 / 錯体触媒 / 結晶相転移 / 力学材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋肉や鞭毛運動などの生命の動力システムでは、化学エネルギーが分子レベル・ナノレベルの機構を通じて、マクロスケールの「機械的な力」にダイレクトに変換されている。生命のシステムではありふれたものであるが、これを分子レベルから再現した人工システムは未だ作られておらず、「化学」が太刀打ちできない「生命」の高度な機能の一つであるといえる。有機結晶は相転移によって結晶の形「外形」が大きく変化する場合がある。相転移においては、分子のコンフォメーションや分子間相互作用のパターンが、熱や光などの外部環境により変化し、結晶構造の変化が集積して結晶の外形の変化につながり、力学的な力が発生する。有機結晶の反応と構造変化、相転移を活用して、これを人工的に再現するのが本研究の最終目的である。結晶内部で進行する触媒反応を用いて、結晶構造の変化と、外形の変化を繰り返し誘起することができれば、力学的な力を発生することのできる化学反応エンジンができる可能性がある。本年度は、触媒活性はないものの、塑性変形をする有機結晶の挙動を調べて成果を上げた。塑性変形と熱による相転移を併せ持つ結晶は、温度変化によりマニュピレーター様の動きを示す。一方で、触媒活性のあるロジウム(I)からなる遷移金属錯体結晶の作成は、化合物の不安定性から成功には至っていない。より安定な金属錯体を用いることや、安定な有機触媒の結晶を用いることで問題が解決できると考えている。金属錯体結晶のダイナミックス研究では大きな成果を上げている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は大きく二つの方向性で研究を行った。一つは、有機結晶並びに、有機金属結晶の動的構造を明らかにし、分子の一部の構造が結晶内で回転などの運動性を持つことを明らかにした。また、ハロゲン結合などを活用した、結晶内超分子構造の構築を行った。この方向性では大きな成果が得られた(j. Am. Chem. Soc. 2023, 27512; Angew. Chem. Int. Ed. 2023, e202309694; Crystal Growth & Design 2023, 4514; Chem Sci, 2023; 4485; J. Am. Chem. Soc. 2023, 7376) 触媒活性をもつ有機金属錯体の結晶を作成することは本研究の一つの重要な方向性である。ロジウム(I)錯体は、アルケンの選択的水素化で使われる Wilkinson錯体 [RhCl(PPh3)3]のように、様々な反応の触媒となることが知られている。去年に引き続き、本年度は、立体障害の大きなNHC配位子をもつロジウム(I)錯体を合成し、この単結晶を作成することを試みた。しかし、その不安定性が克服できず、現在のところ、合成に成功していない。
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Strategy for Future Research Activity |
触媒反応を示す遷移金属錯体の結晶を効率良く合成することが困難である一方、有機結晶や有機金属結晶の動的構造の知見は蓄積できている。触媒反応を手がける前に、化学量論反応、特に電子環状反応などの、反応前後で分子量が変化しないタイプの反応を結晶内で実行することを試みる。このような化学量論反応で得られた知見を活用して、固体内での触媒反応、ひいては化学エネルギーを力学エネルギーに変換する結晶構造、機構を構築する事を検討する。例えば、電子環状反応、クライゼン転位反応などを結晶中で実施する検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画していた、立体障害の大きなロジウム(I)錯体触媒の単結晶作成がその不安定性から非常に難しいことが明確となり、化学量論的な反応性をしめす有機結晶の合成にフォーカスしようとするため。次年度使用額と当該年度以降分として請求した助成金を合わせた使用計画として、結晶内での電子環状反応や、クライゼン反応を実現するための結晶化合物の合成に必要な試薬や装置の購入に充当する。
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Research Products
(23 results)