2022 Fiscal Year Research-status Report
Multiple Integration of Soft Polarized Structures for Development of Photo- and Electric Field-Functional Polymers
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22K18335
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小柳津 研一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90277822)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2027-03-31
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Keywords | 分極 / 多重集積 / 透明ポリマー / 屈折率 / 光学・誘電特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,「屈折率が2を超える高屈折率かつ透明な有機材料は存在するか?」といった命題に対し,「芳香族系高分子の結晶性や密度を決める分子間相互作用の制御により,無定型かつ高密度なバルク構造を形成する」ことを方法論として展開し,まったく斬新な高屈折率透明樹脂の一群を創出しようとしている。本年度は,この方針に沿って,分極性の(すなわちソフトな)芳香環π電子と硫黄2p電子の密度高い集積構造を「ソフト分極場」と捉え,光学特性に加え誘電性等の電場応答性を制御する方法論として展開した。これにより,超高屈折率材料を具体化するための手がかりを明確にした。以下に具体的に述べる。 (1) 分子設計の明確化:類例ない超高屈折率・耐熱性・透明性 (完全非晶質) を有し,有機高分子における経験的限界として知られている屈折率とアッベ数の相関を突破した新規樹脂群を創製するため,代表者らのオリジナル物質である芳香族ジスルフィドの酸化重合により得られる一連のポリ(フェニレンスルフィド) (PPS) 誘導体にまずは着目し,多様な置換基導入によって分子鎖間相互作用力の制御が可能で,強い凝集力を示しながらも完全非晶質化し,従前の無置換PPSとは全く異なる非晶質な物性を発現することを多くの誘導体について明確にした。 (2) 非晶質化の方法論の確立:フェニレンスルフィドポリマーのベンゼン環3,5-位のメチル基が完全非晶質かつ高耐熱性をもたらすことを幅広い誘導体や共重合体について明らかにし,高い可視光透明性,高い硫黄含量に基づく高屈折率,高アッベ数 ,超低誘電損失など,PPS鎖本来の特徴として期待されながら実証例の無かった斬新な物性を引き出した。これらの特性は,芳香環と硫黄原子の分極性高いソフトな性質が,高分子主鎖に沿って無定形状態で多重集積した場の効果として一般化できる可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の研究計画の順調な進展 (主にポリマー合成の計画通りの進捗による高屈折率化の実現) を受け,計画を前倒ししてソフト分極の多重集積に取り組み,以下に示す当初期待以上の成果を得た。超分子相互作用を組み込むことで,無定形状態が維持された範囲でバルク状態の鎖間凝集力を最大化することが可能となったことは,今後の研究展開に向けた重要な基盤を提供した。これにより,高屈折率ポリマーの設計概念に関する革新的ゲームチェンジの可能性を明確にした。 (1) 高い可視光透明性と非晶性を維持可能な超高屈折率構造の導出:高い分極性をもつ芳香環や硫黄原子を豊富に含む非共役系高分子からなる「ソフト分極場」を形成する主鎖構造と,多重集積に寄与する分子間相互作用を与える側鎖からなる超高屈折率ポリマーを具体的に選定した。Lorentz-Lorenz式において,可視光透明性や無定形状態を維持可能な範囲で分子屈折を最大化し,分子体積を最小化(すなわち繰り返し単位のコンパクト化と高密度化)する分子設計の下で超高屈折率を実現できることを多くの事例で実証した。この検討において,ポリマー膜の密度が重要なパラメータであり,ガラス転移点前後での分子鎖の緩和効果を積極的に利用することで,高密度化に起因した高屈折率が導けることを初めて明らかにした。 (2) 超分子相互作用とバルク状態における高次構造・屈折率の相関解明:(1) で見出した超高屈折率ポリマーのバルク構造を解明し,高い屈折率・アッベ数・可視光透明性を両立する仕組みを分子間相互作用の観点から描像できた。無定形のバルクで形成される相互作用力の強度や時間スケールは,固体NMRとレオロジー測定から得られる緩和時間や弾性率をもとに評価できる可能性があり,その道筋を明確にした。対照実験として水素結合基を含まない構造も検討し,分子間相互作用の寄与を解明した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に確立した基礎知見を,具体的な新物質に広く適用することにより,研究全体方針に沿ってソフト分極構造の集積効果を明らかにする計画である。これまで代表者が見出した酸化重合で得られる一連のPPS誘導体における非晶性・高い可視光透明性を最大限活用し,Lorentz-Lorenz式からの推算値を大幅に超えた高屈折率を多様な事例で明らかにしたい。これは,PPS鎖が元来有する分子鎖間の強い凝集力が誘導体でも維持されるため,有機物から成る無定形固体としては異例の高密度を実現することによるもので,従来は具体的手がかりがなく着手できなかった非晶質・無定形高分子のバルク構造そのものの制御に踏み込む知見を与えている。。 本年度の成果の中で,興味深いことにPPS誘導体は可溶で側鎖 (置換基) と末端の精密誘導化が可能であり,置換基の構造に応じて接着性,汎用ポリマー (ポリスチレン (PSt) 等) との相溶性,無機微粒子分散性などを発現することが分かった。このような複数機能の同時発現を可能とする手掛りが得られたことで,高屈折率や透明性に加えて,耐熱性,機械特性などを制御しつつ,光学・誘電機能材料として広く展開できる体系的手法が確立できると考えられる。 PPS誘導体が形成するソフト分極場の利用と,超分子相互作用による高密度な無定形固体の構築を方法論とした非晶性ポリマーの密度の限界突破により,これまでは分子屈折の制御に依拠していた高屈折率ポリマーの設計指針を大きく転換させたい。また,このような潜在性を有するキーマテリアルとして,含硫黄ポリマーの合成・物性化学を展開することを今後の推進方策としている。超高屈折率化のメカニズム解明を基軸として,従来トレードオフの関係にあった屈折率・アッベ数の相乗的な向上を達成することで,既に分子設計が限界に達しつつある高屈折率ポリマーの開拓にゲームチェンジを促す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,ソフト分極構造の多重集積に向けたキーマテリアルである硫黄含有芳香族ポリマーの合成と物性解析において,熱重量分析装置を次年度に導入する必要が生じたためである。本研究が目的とするポリマーの熱特性は,現在までの進捗状況で述べたとおり,非晶質・バルク構造の分子鎖の凝集性あるいは材料としての密度が重要な因子であり,これを熱的性質から解明することが重要であることが分かった。そこで,次年度に当該熱分析装置を導入し,目的に合致したポリマー合成をより効率的に進捗させることにしたため,本年度経費の一部を次年度の設備備品費として使用することとした。
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Research Products
(5 results)