2022 Fiscal Year Research-status Report
Geomagnetic navigation of marine animals: Elucidation of the function of similar circling movements observed across marine megafauna taxa
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22K18369
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 克文 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (50300695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楢崎 友子 名城大学, 農学部, 助教 (30772298)
中村 乙水 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 助教 (60774601)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | バイオロギング / ウミガメ / 外洋性魚類 / 野外調査 / データロガー |
Outline of Annual Research Achievements |
過去にキングペンギンから得られたデータを解析し、採餌旅行中に繁殖を行っているインド洋亜南極圏に位置するポゼッション島から、数百キロメートル南に位置する採餌海域まで往復する間の、頭の向きについて知見が得られた。採餌海域まで移動するフェーズと、島まで戻るフェーズにおいて、潜水中と潜水終了後に水面に滞在する間、キングペンギンの頭の向きは進行方向に集中していた。この結果は磁気感覚を使って進行方向を定めていることを示唆するものである。この結果をふまえて2023年度はフランス人共同研究者と、再度キングペンギン野外調査を行う予定である。 過去にオオミズナギドリが繁殖を行っている岩手県船越大島から船で100m南東方向および東方向に移送した後に放鳥し、繁殖巣に戻ったところを捕獲して得たデータを解析した。いずれの鳥も半日ほどで繁殖地に戻ってくることが確認できたが、戻るまでの経路上で2通りの旋回行動を行っていた。時々着水しながら旋回する行為は採餌行動に関連していると考えられた。着水せずに空中を数回以上旋回する行動が、その他の海洋動物に見られた旋回行動と同様に地磁気測定に関係していた可能性が考えられる。 その他、4種類の動物を対象とした野外実験を行い、それぞれ以下の成果を得た。山口県上関町で装置を放流した後放流したホシエイは、数日間であれば半径50km圏内で個体から切り離した装置を回収できることが確認できた。マカジキ1個体からビデオ画像と行動データを取得したところ、水面付近で周期的に旋回する行動が確認された。沖縄県八重山郡黒島においてアオウミガメを刺し網で捕獲し、行動記録計とビデオカメラを取り付けた後に、捕獲場所とは異なる島の反対側に移送して放流したところ、いずれも数日以内に捕獲された場所に戻ることが確認できた。定置網で捕獲されたヒラマサ1個体に装置を取り付けて放流し、旋回行動が複数回確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度に予定していた野外実験の内、ホシエイとマカジキとアオウミガメを対象とした放流実験は実施することができた。ただ、動物の旋回行動が磁気感覚に関連したものであるという仮説を検証するための磁気感覚攪乱操作はまだ実施できていない。そのため、「やや遅れている」と評価した。 ホシエイ実験は、2022年9月に山口県上関町で実施した。延縄で捕獲した5個体の尾鰭付け根付近に、人工衛星対応型発信機付き記録計miniPATを装着して放流した。装置は8ヶ月後に魚体から切り離され、人工衛星経由でその間の回遊経路や遊泳深度データを送ってくる予定である。5尾中3尾の装置は数日後から2ヶ月後に魚体から外れ、その間の行動データを部分的に入手することができた。残る2尾からの装置は2023年5月末に魚体から切り離されて海面に浮かび、人工衛星からデータを入手できる予定。 マカジキ実験は、2022年9月から12月にかけて、茨城県大洗町から出船するプレジャーボートに乗船し、ルアー釣りで捕獲された個体を対象に実施した。1個体からビデオ画像と行動データを取得した。別の1個体には人工衛星対応型発信機付き記録計miniPATを装着して放流した。装置は半年後に魚体から外れる予定であったが、やや早く2023年3月に外れて海面に浮かんだ。現在装置からのデータを人工衛星経由で受信している。 アオウミガメ実験は、2022年7月および2023年2月に、沖縄県黒島で実施した。サンゴ礁に仕掛けた刺し網で個体を確保し、行動記録計とビデオカメラを取り付けた後に、捕獲場所とは異なる島の反対側に移送して放流した。放流されたアオウミガメはいずれも数日以内に捕獲された場所に戻ることが確認できた。 定置網で捕獲された後の放流されたヒラマサ1個体より、数日間で計25回の旋回行動が観察され、その内23回が反時計回りであった。最大の周回数は9回であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に実施できなかったマンボウを用いた野外実験を実施する。また、いずれの対象動物においても磁気感覚を一時的に狂わす操作実験として、マグネットをつけて放流し、途中でマグネットのみを脱落させることで、その前後の行動変化を記録することを行う。アオウミガメにおいては、島の反対側に放流した後に捕獲場所に戻る固執性を有することが確認できたので、2023年度は沖合に放流して島に戻ることを確認した上で、磁気攪乱実験もあわせて行いたい。 2022年度まではコロナ禍のために海外渡航が大きく制限されていたが、2023年度はハワイにおけるカジキ類実験なども実施する方向で研究協力者と打ち合わせを進めている。
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Causes of Carryover |
外国から輸入される商品(アルゴス方向探知機)が当初想定していたよりも安く購入できたため差が生じた。残額については次年度の消耗品購入費に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)