2022 Fiscal Year Research-status Report
多機能化一本鎖抗体によるアミロイドβ凝集体細胞内スワイプ療法の開発
Project/Area Number |
22K18380
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
星 美奈子 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(副センター長・部長クラス) (30374010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 慎一 自治医科大学, 医学部, 教授 (10239543)
笹原 智也 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(上席・主任研究員クラス) (30735345)
石井 佳誉 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (40799045)
豊島 近 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任教授 (70172210)
喜井 勲 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (80401561)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / 神経細胞死 / 異常凝集体 / アルツハイマー病 / 治療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病は、アミロイドβ(Aβ)由来毒性凝集体が発症トリガーとなる。生理的に産生される未凝集Aβには神経保護作用があることが最近解ったが、毒性凝集体の形成過程は不明で、Aβを除去せず凝集体を選択的かつ早期に除去する方法はなかった。星らは、Aβは全神経で産生されるが、AD発症に直結すると考えられる毒性Aβ凝集体「アミロスフェロイド(ASPD)」は興奮性神経細胞でのみ形成されること、Aβがある細胞内小器官に運搬される細胞ではASPDが形成されないことを見出し(星:未発表)、毒性凝集体の選択的除去が重要かつ可能であるとの認識を得た。そこで、抗ASPDヒト化抗体を蛍光標識しASPDナノセンサーとすることで細胞内ASPD形成過程を解明する。次に、同抗体を改変し、ASPDを神経内で捕捉し細胞内自己消化、スワイプするという本共同研究を立案した。この創薬戦略を書いたレビューは、高い評価を得て、British J Pharma 2021年2月号の表紙として採択されるに至った。本提案は全く新しい試みであり、挑戦的研究として実施する意義は大きい。 目的達成のために、初年度は、 (1)ASPD抗体を蛍光標識化し、蛍光ナノセンサーとすることでASPD形成部位を同定する (2)細胞内でASPDを補足し除去出来るスワイプ抗体を設計作製する (3)上記抗体の性能を上げるために、ASPDとASPD抗体の相互作用についてNMRやX線結晶構造解析を用いることで原子レベルでの解明を目指すことを実施した。その結果、神経芽細胞腫において、ASPDを補足することが出来るものを作製することに成功した。現在、初代培養神経細胞を用いてその効果を検証中である。上記のとおり、予定した実験計画を順調に進めることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり、予定した計画を順調に進めることに成功した。また、研究の過程で、全く予想外の結果を得て、そこから新しいブレークスルーに繋げることに成功した。知的財産に関わる内容なので具体的な内容には踏み込めないが、細胞内輸送について新しい知見を得て、それを生かしたスワイプ抗体の作出に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)今年度作製したASPDナノセンサー、及び、ASPDスワイプ抗体の機能を初代培養神経細胞を用いて検証する。 (2)固体NMR及びX線結晶構造解析を用いて、ASPDとASPD抗体の相互作用について原子レベルでの構造解析を進めていく。この結果を(1)に反映させる。 (3)(1)を評価するためのASPD高発現動物モデルの解析を進め、動物試験の準備を行う。 (4)スワイプ抗体をAAVベクターに載せ替える。 上記を進める。
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Causes of Carryover |
本年度の最初の目標は(1)抗ASPD抗体scFvのX線結晶解析による原子構造の決定であり、大量の高度に精製された標品を取得するための費用、SPring-8での測定に要する経費を計上した。次の目標は、(2)ASPDと抗ASPD抗体フラグメントのクライオ電子顕微鏡による構造決定であり、試料グリッド等の消耗品、電子顕微鏡使用料等を計上した。(1)に関しては、予想よりも早く、交付決定前にデータ収集を完成することができた。(2)の消耗品に関しては、他の研究にも必要なものであり、そちらの方が消費が多かったので、本研究では支払いを行わなかった。そのため、本年度は大きな研究の進展はあったが、支払いは発生しなかった。次なる目標は抗体の最適化であり、NMR或いはクライオ電顕による構造決定の進展を待っている状況であるが、蛋白質生産とクライオ電顕に係る消耗品は高額になることが予想され、研究の本格的進展が期待される次年度にまとめて使用することとしたい。
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Research Products
(4 results)