2022 Fiscal Year Research-status Report
消化管グルコース排泄の生理・病理的意義に関する包括的解析
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22K18393
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小川 渉 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40294219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和泉 自泰 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70622166)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | メトホルミン / 腸管グルコース排泄 / 腸内細菌 / 短鎖脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、代表者が見出した糖尿病治療薬メトホルミンが腸管内腔へのグルコース排泄を促進するという新知見に基づき、腸管内腔グルコース排泄の糖代謝恒常性維持機構における意義を明らかとすることを目指す。 まずPET-MRIを用いて経静脈的に投与した18F-FDGの腸管内腔の移動速度を定量する方法を確立した。18F-FDGの移動量を2コンパートメントモデルによって解析することにより、グルコースの腸管内への移動量を推定した。その結果、メトホルミン服用群で時間当たり約1.6g、非服用群では時間当たり0.4gのグルコースが腸管内に排泄されることを明らかとした。また、正常血糖高インスリンクランプ中に経口的にグルコースを負荷することにより、経口的に摂取したグルコースの肝臓への取り込み能を推定できるグルコースクランプ法(Clamp-oral glucose load: Clamp OGL) のプロトコールを確立した。メトホルミンまたは対照薬を服用する2型糖尿病患者に対して、Clamp OGL及びPET-MRIによる腸管内グルコース排泄定量を実施する無作為ランダム化臨床試験を開始し、予定試験患者数の約90%のリクルートを終了した。 マウスに安定同位体13C標識グルコースを静脈投与した後、糞便及び血漿試料を質量分析に供し、グルコース代謝物の定量と安定同位体標識化率を算出することを試みた。糞便中に13C標識グルコースは検出されなかったが、プロピオン酸、酪酸、酢酸などの短鎖脂肪酸の13C標識率は増加し、メトホルミン投与によってプロピオン酸の13C標識率は更に増加し、酢酸や酪酸においても増加傾向を認めた。この結果から、血中のグルコースは腸管内に移動し、腸内細菌によって短鎖脂肪酸へと代謝されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題の核心をなす臨床試験での評価法であるClamp OGL及びPET-MRIによる腸管内グルコース排泄定量を確立し、予定通り試験の開始に至った。また、試験の進捗は順調であり、予定より早い時期に解析が実施可能と考えられる。 マウスを用いた13C標識グルコース代謝物の実験計画も順調に進捗した。従来、短鎖脂肪酸は宿主が摂取した難消化性食物線維を腸内細菌が代謝して産生すると考えられてきたが、宿主が自ら腸管内に排泄したグルコースからも産生されるという、新規な生命現象を明らかにするに至ったことは、大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床試験については更に症例の組み入れを進めす。試験完遂後にClamp OGLデータとPET-MRIによる腸管内グルコース排泄定量データを比較検討するとともに、糞便中の腸内細菌叢や腸内細菌叢代謝物の変化などの解析を通じて、腸管内腔グルコース排泄の糖代謝恒常性維持機構における意義を明らかとすることを目指す。
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Causes of Carryover |
本計画の中で臨床試験については、の症例組み入れは順調に進捗し、およそ90%が完遂している。ただ、患者検体を用いて行う検査が、全ての症例で試験が完遂してから実施することになったため、年度内に実施しなかった検査があり、 次年度使用計画が生じた。
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Research Products
(2 results)