2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K18471
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 勤 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (10216731)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 石牟礼道子 / 田中正造 / 産業公害 / 近代 / 環境文学 / 水のモチーフ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまで石牟礼道子の作品分析の成果として、「ことばの近代―石牟礼道子における風土と文学」『文学と環境』6 (文学・環境学会、2003年)、 “Minamata and the Symbolic Discourse of the South” Ecoambiguity, Community, and Development (Lexington Books, 2014)を刊行しており、足尾鉱毒問題に関しても“Ethics of Natural Disaster: Shozo Tanaka and Ashio Mine Poisoning.” Tamkang Review, no. 37 (Autumn 2006)を刊行してきた。 今回のプロジェクトではさらに考察を進め石牟礼文学の思想性と、その環境人文学的な意義について包括的な考察を行うものである。令和4年度については『苦海浄土』三部作を中心として環境破壊をめぐる近代的構図について考察することが主な目的であった。石牟礼道子関係資料、および東アジアの環境人文学関係資料を集中的に購入したほか、『苦海浄土』三部作を精読し、「ノロの語り:石牟礼道子における近代の構図」という講演を最終講義(九州大学言語文化研究院、令和5年3月23日)として行った。 また環境人文学関連の研究実績としては、研究論文「自然保護という思想―ソローからミューアへ」『エコクリティシズム・レヴュー』第15号(2022年、1-9頁)のほか、図書『19世紀アメリカ作家たちとエコノミー』(彩流社、2023年)を共著として刊行した。さらに研究発表「ホーソーンとその岩」日本アメリカ文学会全国大会(専修大学、2022年10月8日)および招待講演「難破船の詩学―マサチューセッツのメルヴィル」(九州大学文学部、2023年2月18日)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が「順調な進捗状況」と考える背景には以下のような要因が挙げられる。まずひとつは石牟礼道子関係資料、および東アジアの環境人文学関係資料を集中的に購入できたことである。ふたつ目の要因として石牟礼道子の『苦海浄土』三部作を綿密にノートを取りつつ精読し直したことである。三つ目の要因として、「ノロの語り:石牟礼道子における近代の構図」という講演を最終講義(九州大学言語文化研究院、令和5年3月23日)として行ったことである。 課題として残されたのは、石牟礼が水俣病問題を足尾鉱毒事件と関連づけ、近代産業の負の遺産の「集約的表現」とした構図について掘り下げて考察することであった。石牟礼道子と荒畑寒村の対談録、あるいは大鹿卓『渡瀬川』『谷中村事件』に対する石牟礼の「解説」等を参照し、水俣病事件を近代産業の縮図とした石牟礼の問題意識を考察することである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度については、『苦海浄土』『天湖』を中心として、「汚染」の問題と共同体の崩壊がどのように関連づけられているか考察する。特に 「水」のモチーフ(湖、泉、共同井戸、排水口、龍神伝説等)に注目し、自然の循環に根ざす共同体の暮らしと生活文化の記憶がいかに分断されたかを検証する。『苦海浄土』を貫くモチーフのひとつは「水」であり、この作品を自然生態系の汚染と、共同体の暮らしと精神風土の崩壊の物語として読み直すことも可能である。汚染によって自然の循環が分断され共同体を崩壊させた事件として水俣病問題を考察することである。石牟礼文学における水のモチーフの考察をとおして、本研究課題のもう一つのテーマである風土性(神話的心性)の考察につなげたい。 実質的な研究方法としては、備品として新たな図書の購入が必須となるほか、水俣市と足尾市の視察見学を予定している。さらに成果発表として国際学会での研究発表を構想する。
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Research Products
(5 results)