2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K18500
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
奈良間 千之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50462205)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 氷河 / 雪渓 / 質量収支 / 飛騨山脈 / アイスコア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の3つの研究課題である,1)氷河分布の全貌解明,2)氷河の長期間の質量収支観測,3)積雪から氷河氷に変態する氷化過程についての成果を報告する. 1)氷河分布の全貌解明については,雪渓規模が大きく,雪渓より上流部の集水域が小さい白馬連山の杓子沢雪渓,不帰沢雪渓,白馬沢雪渓において,GNSSによる氷河の流動観測と地中レーダー探査による氷厚測定を実施した.その結果,杓子沢雪渓と不帰沢雪渓はこれまで確認された小規模氷河と同程度以上の氷厚および流動が観測され,定義上の現存氷河であることが確認された.白馬沢雪渓は同程度の氷厚があることを確認したが,2回目の流動測定の際に雪渓崩落で測定地点に近づくことができなかったため再測は次年度に持ち越した. 2)氷河の長期間の質量収支観測については,飛騨山脈の氷河と雪渓を対象に2015~2022年の年間質量収支,涵養深,消耗深を観測した結果,氷河の消耗深の年々変動は小さいのに対し,涵養深および年間質量収支の年々変動は大きく,氷河の質量収支はその年の積雪深に依存することが示された.氷河の涵養深,消耗深は20m を超え,その質量収支振幅は世界で観測されている氷河(WGMS氷河)の中で最大であった.また,氷河・雪渓の融解量を見積もるため,気象測器を購入し,白馬頂上宿舎に設置した. 3)積雪から氷河氷に変態する氷化過程については,杓子沢雪渓で10月にアイスコアを掘削した.得られたコアの全長は754cmであった.コア上部の汚れ層は上から2022/2021年,2021/2020年境界を示すと考えられ,深度364cmからは連続した氷層であることを確認した.フィルン層は連続した氷層に近づくほど密度は増加し,含水率は低下していた.今後さらに解析を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3つの研究課題である,1)氷河分布の全貌解明,2)氷河の長期間の質量収支観測,3)積雪から氷河氷に変態する氷化過程について,それぞれで成果が得られた.1)氷河分布の全貌解明については,白馬連山に位置する3つの雪渓を調べ,2つは氷河であることを確認した.2)氷河の長期間の質量収支観測については,2015年~2022年の質量収支の結果をまとめ,日本の氷河の質量収支の特徴を明らかにした.また,氷河・雪渓の融解量を見積もるため,気象測器を購入し,白馬頂上宿舎に設置した.3)積雪から氷河氷に変態する氷化過程については,8mほどのアイスコアを掘削でき,質量収支と合わせた新たな知見を得られる可能性が高い.以上の結果,計画以上に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
3つの研究課題である,1)氷河分布の全貌解明,2)氷河の長期間の質量収支観測,3)積雪から氷河氷に変態する氷化過程について,今年度の計画を記す.1)氷河分布の全貌解明については,杓子沢雪渓,不帰沢雪渓,白馬沢雪渓において,昨年設置したステークの再測を10月におこない年間の流動量を求める予定である.2)氷河の長期間の質量収支観測については,4月1日にセスナ空撮を終え,冬期の積雪量を算出する画像データを取得した.融雪末期の10月にもセスナ空撮を予定しており,夏期の融解量と年間の質量収支を求める予定である.3)積雪から氷河氷に変態する氷化過程については,9月と10月に杓子沢雪渓において深層掘削により雪渓深部のコア取得を試みるほか,複数の表層コアを取得して氷化過程についてより詳細に調査する予定である.
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