2022 Fiscal Year Research-status Report
法言語の美的洗練による応答性の向上―計量言語分析と社会心理実験による検証―
Project/Area Number |
22K18512
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
尾崎 一郎 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (00233510)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 法言語 / 法化 / 美的洗練 / 計量言語分析 / 社会心理実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の法言語の言語学的特徴を把握するための計量言語分析と社会心理実験を行うための準備作業のための研究会を開催した。 具体的には、法言語学者の堀田秀吾明治大学教授と社会心理学者の李楊名古屋大学研究員をお招きし、法社会学者の同僚郭薇准教授と共同の企画で、2022年9月3日に法理論研究会特別例会(報告者:堀田秀吾教授、タイトル:判決文の計量言語学的分析)を開催し、法言語の計量言語分析によって把握するための分析視角と分析例を検討した。すなわち、第1に、法的コミュニケーションにおいては「文法的能力」「社会言語的能力」「方略的言語能力」のいずれについても非常に多様な能力が要請され、発信者のみならず受信者も洗練された能力を必要とすること、第2に、いわゆる一般市民が審理に参加する裁判制度導入前と後では判決文の言語学的特徴に一文の長さが短くなり平易な言葉も多用されているという変化が生じたものの漢字率や専門用語の使用率には有意な変化はなかったこと、第3に、模擬裁判における評議データについての先行研究をもとに、裁判官、陪席裁判官、裁判員それぞれの特徴的な使用単語を抽出するという分析手法が、本研究にとっても有用であること、が確認された。 この研究会の後、同じ問題関心からなり2022年のイグノーベル賞を受賞した海外の先行研究について、さらには社会心理実験で法言語の理解度を測定するための実験・分析手法について、堀田、李、郭薇の三人と断続的にオンラインで協議を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
法令データのコーパス構築の作業をまだ行っておらず、分析手法の確認と、研究協力をお願いしている研究者との問題関心の共有ならびに断続的な協議にとどまっている面があるため。社会心理実験の予備実験も、対面授業の制約もあって、多数の学生相手に行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
法令データのコーパスの構築と、社会心理実験の予備実験に、なるべく早く着手し、コーパス分析と本実験を令和5年度内に行う。
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Causes of Carryover |
準備作業としての理論状況の整理と協力者との問題関心の共有を入念に行ったため、法令データのコーパス構築と社会心理実験の予備実験に着手しなかったことで、それらに充当するはずの研究費が未使用となり残額が生じた。令和5年度は当初の予定通りコーパス構築と社会心理実験に残額を充当する。
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