2022 Fiscal Year Research-status Report
Universal limit for the action of an agent maximizing utility
Project/Area Number |
22K18526
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
田中 琢真 滋賀大学, データサイエンス学系, 准教授 (40526224)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 確率的モデル / 効用 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
確率的な環境における意志決定のモデル化をするため、減耗しない資本の価格が変動し、減耗する資本の価格が固定され、生産関数が各期に1次マルコフ的に変動すると仮定して効用を最大化する主体の行動について調べた。最適化問題として定式化すると、数値的には、主体は減耗しない資本の売買によって損をすることがない可能性が高いことがわかった。これを厳密に証明するため、定式化を試みている。 現在の定式化では資本の種類については減耗するものもしないものも限定されておらず、価格の変動も決定論的である以外に制限はかかっていない。生産関数については凸性を仮定する必要があると考えているが、これも必要条件であるかどうかは不明である。後述する決定論手的な場合については生産関数には一切仮定が不要であることがわかっている。適切な定式化を見つけるための数値的な検討を進めている。生産関数の変動を決定づけるマルコフ仮定についても条件の検討を行っている。 また、すでに証明している決定論的な場合については、仮定を緩め、完全に合理的でない主体でも同様の結果を導けることがわかった。これによって証明も著しく簡単化されることがわかった。この場合、主体は将来の行動について完全な最適化を行う必要はなく、市場を通じた取引によって少なくとも取引を全くしなかった場合よりも効用を改善できることのみが条件になる。この結果を受けて、確率的な環境についてもこの定式化でアプローチできないかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在調べているのは、生産関数が1次マルコフ的に変動し、減耗しない資本の価格が決定論的に変動し、減耗する資本の価格が固定されている場合の主体の行動である。 以前に類似の設定で決定論的な場合については厳密に主体に損失が発生しないことを証明している。この決定論的な場合について、仮定を大幅に緩めても同様の結果を証明できることを見つけた。これに基づいて確率的な場合も仮定を大幅に緩めて証明を試みている。決定論的な場合と同様に、確率的な場合についても、完全に合理的な主体ではなく、限定された合理性を持つ主体であれば同じ結論が導けるならば、理論の適用範囲が大幅に広がることが期待される。現在、計算サーバを用いて数値最適化を並列化し、数値的な検証を加速している。 以上の研究に加えて、複数主体の意志決定についてゲーム理論的な定式化も必要になってくると考えられるため、調査を進めている。これは市場を介した財の取引を超えた取り扱いを将来考えるための基礎となる。
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Strategy for Future Research Activity |
確率的な意志決定についてはまだ証明が可能か不確実な点があるため、検証を進める。一方で、少なくとも決定論的な場合についての結果の拡張は証明ができている。この結果には新規性があるため、確率的な場合についての証明が完成するかどうかにかかわらず、論文化を進める予定である。 確率的な場合については、厳密な解析とあわせて、拡充した数値計算基盤を活用して最適化による仮説の検証を行っていく。サーバに数値最適化パッケージを導入し、かなり複雑な条件をつけた最適化問題を解かざるを得ない今回のような問題の数値的アプローチが可能になった。これによって研究が加速されるものと考えられる。証明のためにどのような条件が必要であるか条件を絞るために数値計算を活用する。 また、確率的な環境の中での主体の意志決定に加えて、複数主体の意志決定についてのゲーム理論的な定式化も試みている。これに関する幅広い分野にわたる調査も行っていく。可能であれば小規模な数理モデルを構築してその性質を調べる。
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Causes of Carryover |
数値計算による検証にとどまっており、学会における発表や論文の公表に至らなかった。このため、旅費や論文校閲費用が当初予定よりも少なくなった。今後、計算機の拡充も含めて研究費を活用して研究を進め、成果の発表を行っていく。
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