2022 Fiscal Year Research-status Report
就労定着における障害者と企業との合理的配慮に関する対話プロセスの類型化の試み
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22K18546
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小澤 温 筑波大学, 人間系, 教授 (00211821)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 就労定着支援 / 対話 / 合理的配慮 / 折り合い / メンタルモデル / 共有メンタルモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は以下の3点であり、2022年度は研究1と2を実施した。研究1「障害者の職場定着に影響を与える合理的配慮をめぐる『対話』プロセスと定着サポートに関する理論的整理と仮説検討」、研究2「障害者雇用の定着率の高い企業・支援機関における合理的配慮をめぐる『対話』プロセスと定着サポートの実証的分析」、研究3「障害者の定着支援における合理的配慮をめぐる『対話』プロセスの類型化と妥当性検証 」 研究1の取り組みとしては、国内を中心に「対話」と合理的配慮に関する文献・資料を収集し、その整理を行った。研究2の取り組みとしては、国内の定着率の高い障害者雇用企業の障害者・担当者を対象とした半構造化面接調査を予備的な研究として実施し、それらの調査データをもとに分析を行う準備を進めている。調査項目は、1)担当者の基本属性、2)法人について(法人理念、障害者が従事する業務、障害者雇用に関する理念・目標・考え方、障害者雇用スタートのきっかけ)、3)障害者雇用における対応について(採用時・定着時の課題と対処方法、合理的配慮における困難性と対応方法、障害者との対話(コミュニケーション)事例と困難時の対応、必要なサポート、能力開発)、4)障害者雇用における組織への影響について(障害者雇用が他の社員や組織に与えた影響、雇用担当者の変化、障害者雇用の経営戦略としての位置付け)の4項目である。 本研究の結果、障害者の職場定着や合理的配慮をめぐる企業と障害者の折り合いの付け方については、個人が持つ知識やこれまでの経験をもとに作られた心理表象である「メンタルモデル」とチームで共有する体系化された理解や知識、その心理表象である「共有メンタルモデル」へのアプローチが重要であるという仮説の方向性を導き出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、研究1と2の予備的な研究を実施することを計画しており、研究1では、国内の「対話」に関する文献・資料について整理を行った。合理的配慮に関しては、韓国社会福祉学会に参加し、日本よりも5年も早く障害者差別禁止法を施行した韓国での障害者雇用における合理的配慮の現状について情報を得ることができ、障害者雇用に関する情報交換も実施した。また、研究2は概ね計画通りに実施することができたと考えている。2023年度は、研究1に関して、国外の文献・資料も含めて理論的な整理を行い、仮説生成の基礎的な素材として検討を進めた。研究2に関しては、11ヶ所の障害者雇用企業に対して半構造化面接調査を予備的研究として実施し、仮説の方向性を検討することができた。2023年度は、それらの調査データをもとに詳細な分析を行う準備を進めており、さらに20ヶ所程度の半構造化面接調査を行うことを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、研究1「障害者の職場定着に影響を与える合理的配慮をめぐる『対話』プロセスと定着サポートに関する理論的整理と仮説検討」において、国外文献も含めて整理を行い、仮説生成の材料となるよう計画をしている。また、研究2「障害者雇用の定着率の高い企業・支援機関における合理的配慮をめぐる『対話』プロセスと定着サポートの実証的分析」においては、2022年度に予備的研究として実施した、国内の定着率の高い障害者雇用企業への半構造化面接調査(障害者・担当者を対象)11件について詳細な分析を行う予定である。加えて、面接調査を20件程度実施、分析する。また、定着率での優良企業1社に対して、実際に働く現場に入り、3回程度の参与観察を実施する。国外では、フィンランドとデンマークにおける障害者就労・雇用をサポートする支援機関等、2カ所程度を対象に、対話の参与観察と担当者への半構造化面接の実施を計画している。
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Causes of Carryover |
2022年度は、研究1と2の予備的な研究を実施することを計画した。ただし、コロナ禍の影響もあり、企業訪問に関しては計画通りに進まなかったことから、研究1では、国内の「対話」に関する文献・資料について整理を行った。合理的配慮に関しては、韓国社会福祉学会に参加し、韓国での障害者雇用における合理的配慮の現状について情報を収集し、障害者雇用に関する情報交換も実施した。当初は欧米諸国における合理的配慮の情報収集を計画していたが、韓国の情報収集に留まった。他方、研究2は概ね計画通りに実施することができたと考えている。2023年度は、研究1に関して、改めて、系統的に国外の文献・資料も含めて理論的な整理を行い、仮説生成の素材とする予定である。研究2に関しては、11ヶ所の障害者雇用企業に対して半構造化面接調査を予備的研究として実施し、仮説の方向性を検討することを進めることができた。2023年度は、それらの調査データをもとに詳細な分析を行う準備を進め、さらに20ヶ所程度の半構造化面接調査を行うことを計画している。また、海外調査としてフィンランドを訪問し、障害者雇用の関係者に対して面接調査を行う予定である。
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