2022 Fiscal Year Research-status Report
高齢期のキャリア形成と生活再編過程に関するジェンダー比較研究
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22K18567
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
前田 信彦 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (20222284)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 高齢期 / キャリア形成 / 定年退職 / 生活再編過程 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、定年退職を契機とした生活適応過程についてジェンダー比較の視点から検討することにある。 2022年度は、主に二つの作業を中心に研究を進めた。 第一に欧米の近年の高齢期キャリア研究並びにエイジングのジェンダー比較に関する研究をレビューし、定年退職後のライフスタイルとジェンダーに関して包括的な知見の整理を行った。その結果、女性の労働市場参入率が高いアメリカを中心に、定年退職とジェンダー比較研究が進んでおり、男女雇用機会均等法以降に施行された我が国の状況を分析する上で示唆を得ることができた。 第二に、2017年(wave1)と2019年(wave2)の2度にわたって実施したWEBによるアンケート調査(時系列データ)を用いて、高齢期キャリア、とりわけ管理職経験者の定年後のライフスタイルに関する男女比較の分析を行った。その結果、定年後のライフスタイルを管理職経験という視点から分析すると、男女で大きな相違がみられた。さらに、キャリア成熟度を探索的因子分析により作成し、管理職経験の男女を比較したところ、管理職を経験した女性は、「自己中心性の減少」「困難への対処能力」といった、二つの成熟度特性においてもいずれも最も高い値を示し、女性の定年後の「成熟度」の高いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、欧米の近年の先行研究をレビューし、定年退職後のライフスタイルとジェンダーに関して包括的な知見の整理を行うことができた。我が国の男女雇用均等法世代の定年退職後のライフスタイルのジェンダー比較の研究を進めるうえで、文献サーベイにおいては一定 の成果が得られたため、おおむね順調に進展していると評価できる。 第二に、2017年と2019年に実施したデータをもとに、定年後のライフスタイルを分析した結果、管理職経験者の男女において定年後のライフスタイルや生活志向において相違がみられたことから、今後、定年後の生活再編過程に関するジェンダー比較という本研究の目的を達成する上でも一定の進展があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、当初の予定の通り、二つの作業を中心に行う。 第一に、文献研究で得られた知見を整理し、我が国の高齢期キャリアと定年退職後の再編過程に関するジェンダー比較研究への示唆を得る。 第二に、2017年および2019年データの再分析をさらに進め、定年後の就業継続志向、ライフスタイル等のジェンダー比較を行い、均等法世代の男女の定年後の生活再編過程についての知見を得る。 第三に、以上で得られた知見をもとに、あらたに2000名程度の大規模調査を実施し、2017年、2019年データの知見を仮説として検証するとともに、キャリアの「成熟度」という新たな概念を用いながら高齢期キャリアと定年後のライフスタイルの実態を探る。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:アンケート調査の一部を2022年度に実施する予定であったが、研究進捗状況を踏まえて、次年度実施に変更した。このため2022年度の予算の一部は未使用となり、次年度にアンケート調査の実施費用として使用する。
使用計画:アンケート調査の実施の費用のほか、最新の諸外国の研究動向把握のための文献資料の購入に使用する。
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