2022 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設での養育が逆境的幼少期体験のある子どもの発達に与える影響
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22K18586
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
島田 尚子 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任助教 (20869945)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / 不適切養育 / fMRI / 脳機能画像 / 児童思春期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、児童養護施設が、虐待・ネグレクトなどの逆境的幼少期体験の影響からの回復を促進する機能を担っているのかどうかについて検証することである。逆境的幼少期体験は、脳の(逆境に対する)適応的変化を引き起こし、生涯にわたって精神症状や行動問題などを高めてしまうリスク因子であることが知られている。児童養護施設での生活が逆境的体験の影響からの回復を促進する機能を担っているという仮説が妥当であるならば、子どもの個別のニーズに応じて養育できる専門性を持った養育者のいる児童養護施設での質の高いケアが、脳の(安全安心に対する)適応的変化を再び引き起こし、過去の逆境的体験というリスク因子の影響を抑制するかもしれない。日本の「新しい社会的養育のビジョン」などの政策において、特に、思春期の子どもが生活する児童養護施設の養育機能に関する科学的根拠の蓄積が必要とされる中で、本研究取り組みは学術的かつ社会的に意義深いものであり、「すべての人に健康と福祉を」などのSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献するものである。 当該年度においては、研究代表者の異動によって研究協力体制が変化した。ただし、児童精神科医として1年間勤務したことで、鹿児島県内にある児童養護施設に入所中の子どもたちの診察をする機会が多数あった。それによって、鹿児島県における不適切養育に対するケアの現状や、児童養護施設での課題などを把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前所属研究機関から現所属研究機関の鹿児島大学へ異動したことで研究協力体制が変化し、鹿児島県の児童相談所や児童養護施設の職員などと関係性を構築することが必要となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、児童相談所や児童養護施設などの関係機関から研究協力が得られるように、関係性を構築し、連携体制を築く。その上で、児童相談所にて家庭養育が困難と判断され児童養護施設に入所中の子どもたちと、その親権者から研究参加の同意を得る。研究方法については、精神症状/行動問題尺度として、反応性アタッチメント症(RAD)症状と脱抑制型対人交流症(DSED)症状評価尺度であるRAD and DSED Assessment(RADA)を用いる。神経発達症症状の中でもADHD症状の評価としてConners3、ASD症状の評価としてSocial Communication Questionnaire(SCQ: Berument, 1999)を用いる。また、子どもの学校や施設における対人関係(例えば、仲間関係)についても評価する。脳神経発達指標としては、MRIを用いて脳構造および脳機能を測定する。脳機能については、簡便で再現性の高い安静時-機能的MRIを用いる。また、生化学的指標として唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)を測定する。
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Causes of Carryover |
前所属研究機関から現所属研究機関の鹿児島大学へ異動したことで研究協力体制が変化し、鹿児島県の児童相談所や児童養護施設の職員などと関係性を構築することが必要となったため、当初の計画通りに研究を実施することができず、次年度使用額が生じた。次年度は実験装置の使用料、実験参加者への謝金など研究費用が見積もられる。また、生化学的指標として唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)を測定、解析を行う予定としている。それらの費用は繰越した研究費で充填する。
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