2022 Fiscal Year Research-status Report
社会科学の計量分析再考:“説明”の評価と解釈に関する数理的開発と検証
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22K18591
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
村澤 昌崇 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (00284224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椿 美智子 東京理科大学, 経営学部経営学科, 教授 (20221418)
松繁 寿和 高松大学, 経営学部, 教授 (50219424)
清水 裕士 関西学院大学, 社会学部, 教授 (60621604)
筒井 淳也 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90321025)
林 岳彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 社会システム領域, 主幹研究員 (90534157)
宮田 弘一 静岡産業大学, 経営学部(藤枝), 教授 (00962937)
中尾 走 広島市立大学, 企画室, 特任助教 (80965434)
樊 怡舟 広島大学, 高等教育研究開発センター, 特任学術研究員 (10971004)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 説明 / 予測 / 因果推論 / 社会科学 / 計量分析 / 機械学習 / 統計科学 / 測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、社会科学の各専門分野で半ば慣習的に用いられている計量分析手法の運用方法を再考し、算出される数字の「意味」や「解釈」を批判的に検証することを目的としている。 2022年度は、研究代表者の所属組織を母体とした公開による研究会を複数回開催し、因果推論を中核としたDAG(Directed Acyclic Graph)、代理変数(プロキシ)がもたらすバイアス、傾向スコア・感度分析の応用による大学体育会の効果分析等を進め、分析により得られた数値結果の「意味」の再考を議論した。 また、研究分担者である筒井(2021)により上梓された『社会学 「非サイエンス」的な知の居場所』に関する本研究グループを中心とした合評会を公開研究会として主催し、社会学、心理学、経済学、教育学、数理科学、環境リスク学、データサイエンス等学際的な見地から、計量分析を通じて得られる「数字」の意味に関する議論に着手した。その他関連する議論を広島大学高等教育研究開発センター公開研究会にて展開した(https://rihe.hiroshima-u.ac.jp/research_activities/public_workshop/2022-2/,第1,5,6回主催) 加えて、研究分担者の林(2022)の主導により、本研究課題の中核となる統計的因果推論に関するセミナーも主催された。 その一方で、本研究課題に関連する研究成果は、論文として積極的に発信・採択されつつあり(中尾・樊・村澤(2022), 中尾・樊・宮田・村澤・松宮(2022),松宮・中尾・樊・宮田・村澤(2022), 康・樊(2023)など)、特に本研究課題に直結する業績として、康・樊(2023)による、高等教育分野で用いられるミクロからマクロに跨がる変数の整理とその意味の再解釈が手がけられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題に直接関係する研究分担者である筒井(2021)により上梓された『社会学ー「非サイエンス」的な知の居場所』について、教育学、経済学、社会学、数理科学、環境リスク学等の多彩な分野からの研究分担者による合評会を行い、各分野における「数字」の「解釈」や「説明」に関する現状を共有しつつ、その統合の可能性を議論し、この議論のプロセス自体を映像・テキスト資料としてアーカイブできたことの成果は大きい。 加えて、本研究課題の研究成果の一部がすでに査読誌に数本採択されるなど、一年目から研究成果が産出されつつある。 以上の理由により、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き公開研究会および国内外の学会発表、査読誌への投稿を通じ、社会科学全般における計量分析による分析結果の数値解釈の慣習的意味や解釈のあり方を整理しつつ、その統合の可能性を模索する。 その際、従来は量的研究とは対極に位置づけられることが多かった質的研究のアプローチが欠かせないので、最近上梓され研究分担者の林も分担執筆している『質的研究アプローチの再検討: 人文・社会科学からEBPsまで』を取り上げた研究会・合評会を主催する予定である。 これら活動を通じて、資料の収集や実証分析事例の蓄積を行い、計量分析における「説明」「解釈」「記述」の意味の再検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画通り、学際的な研究者が集っての計量分析の再解釈の議論は、公開研究会の実施や投稿論文の採択、講演等により順調に進んでいる。 しかしながら、本計画を進める上で、①林(2023)の業績との関連により、質的研究法との対話と交流が俄に必要となったこと、②コロナ禍により、対面での研究会開催、学会発表、調査研究のためのヒヤリング等に関わる出張が難しく、計上していた旅費執行が依然として困難であったこと、③実証分析のためのデータ取得について、①とのかかわりで調査設計の修正が必要となったこと、等により、翌年度に持ち越す形での使用を決定した。 次年度使用額と2023年度の助成金を合算し、2022年度には抑制されていた対面での学会参加発表、研究会開催、ヒヤリングや招聘等にかかる旅費として使用するとともに、2023年度分と合算して、単年度金額では実施し得なかった詳細な実証データ取得を行う予定である。
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Research Products
(34 results)