2022 Fiscal Year Research-status Report
リアルとサイバーを越境する研究、教育、学生:デジタルネイティブ時代の大学
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22K18629
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小林 信一 広島大学, 高等教育研究開発センター, 特任教授 (90186742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福本 江利子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (40835948)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 大学像 / デジタルネイティブ / 研究様式の変化 / プロモーション / 肯定する学問 / 御用学者 / アテンションエコノミー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、デジタルネイティブ時代において、リアル世界とサイバー世界を越境する大学像、研究者像を明らかにし、伝統的な見方を問い直すことにある。大学はインターネットを教育・研究のツールとして使い始めたが、変化はそれにとどまらない。サイバー世界に独自の学術コミュニティが形成され、専らサイバー世界で活動する研究者が出現し、中にはリアルな学術出版に逆進出するだけでなく、大学の教員になる例も現れている。学生はコロナ禍の中でリモート授業を経験した。しかし、サイバー世界には、無料の教育コンテンツが溢れており、学生にとって自大学が提供するコンテンツはその一部でしかない。いまやデジタルネイティブ世代が学生や若手教員になる時代である。研究者や大学も否応なくサイバー世界に取り込まれている。 この目的のために、何が起きているのかを包括的に探索・描出した。変容に関する実態調査、及びWEBスクレイピングにより教育・研究・大学の変容の包括的調査を実施する予定であった。しかし、WEB中には、学術的内容や学術的解説等を取り上げるpay-per-viewサイトやpage-viewにより報酬を与える方式のサイトが多数存在し、それらサイトで活動している研究者等が比較的容易に特定できることが判明した。WEBスクレイピングと比較して精度良く、効率的に分析可能であると判断し、データ収集方式を変更した。収集した人物やその活動に関する深掘り調査を今後進める。 同時に、こうした変容の背後にある学問観、研究者観を分析し、肯定から入る学問/肯定する学問、プロモーション、promotional Intellectuals、御用学者、アテンションエコノミーなどと関連が深いことを見出した。これらは、伝統的な社会=学問相互関係が転換していること、その帰結として伝統的な大学像、大学論、科学論の書換えを要請することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WEBスクレイピングをしなくとも、特定のwebサイトのリストアップを通じて、webで活躍する研究者の特定は可能であることが判明した。WEB中には、学術的内容や学術的解説等を取り上げるpay-per-viewサイトやpage-viewにより報酬を与える方式のサイトが多数存在し、それらサイトで活動している研究者等が比較的容易に特定できることが判明した。WEBスクレイピングと比較して精度良く、効率的に分析可能であると判断し、データ収集方式を変更した。 同時に、現象のみならず、その背後で進む学問自体の本質的な転換に関する根源的な理解ができた。学問的にも興味深いテーマであることが判明した。肯定から入る学問/肯定する学問、プロモーション、promotional Intellectuals、御用学者、アテンションエコノミーなどは、伝統的な社会=学問相互関係が転換していること、その帰結として伝統的な大学像、大学論、科学論を根本的に書換えが必要でああることが判明した。 以上により、現象面、理論面ともに、予想以上の展開を見せた。ただし、論文等に取りまとめるのは今後の作業となる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)学術的内容や学術的解説等を取り上げるpay-per-viewサイトやpage-viewにより報酬を与える方式のサイトで活動している研究者等を特定し、その活動実績等を把握し、トレンド等の分析を行う。 (2)収集した人物やその活動に関する深掘り調査として、インタビュー調査を実施する。 (3)理論面では、肯定から入る学問/肯定する学問、プロモーション、promotional Intellectuals、御用学者、アテンションエコノミーなどとの関連を明確化し、伝統的な社会=学問相互関係が転換していることを示す。 (4)大学像、大学論、科学論が説明できない現象や研究様式を洗い出し、大学像、大学論、科学論の書き換えを試みる。このため、これら分野の研究者との意見交換を行う。 (5)学会等で発表するとともに、論文として取りまとめる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、研究代表者と研究分担者の対面での研究打合せが1回しかできなかったこと、調査対象者の聞き取り調査、専門家への聞き取り、意見交換も実現できなかったこと、学会発表等の機会も限られたことなど、旅費の執行ができなかったことが最大の原因である。リモートで代替した部分あるが、インタビュー調査等においては、限界がある。 コロナ禍も落ち着いてきたので、今後は調査や学会発表等のための旅費が支出される見込みである。
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Research Products
(10 results)