2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K18648
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西井 淳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00242040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪口 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (40205737)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | リズム運動 / 楽器演奏 / 予備動作 / 運動計画 / 運動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
楽器演奏において適切なタイミングに音を出すためには, 要求されるリズムやアーティキュレーションの変化に応じて予備動作を時々刻々と変化させる必要がある。この予備動作の調節はどのように行われているのか,また,そもそも目的とする発音タイミングはどのように決定されているのかを明らかにするため,以下の研究を実施した。 (1) タッピング動作において,休符や連符などを含むリズムパタンに対応するために被験者がタッピング軌道(手先の高さの時間変化)をどのように変化させているかを調べた。その結果,多くの被験者のタッピング軌道は,120 bpmのテンポにおける四分音符部分ではやや釣鐘型の形状であるが,タッピング間隔が長くなる場合には一峰性から二峰性の形状に変化する等の変化が生じていた。また,タッピング間隔が長い場合にはタッピング振幅が大きくなる傾向があった。さらに,アクセントを含むリズムパタンではタッピングの強さと振幅に有意な相関が多くの被験者で認められた。これらの結果は, タッピング間隔や強弱の調節においてはタッピング振幅の変化と軌道形状の変化の両者が伴うことを示す。さらに,タッピング振幅の時間変化がテンポ加速と相関があることを示唆する結果を得た。 (2) ピアノ演奏において打鍵タイミングと演奏における音色の関係を明らかにするため,打鍵時刻のずれが重音や和音の音色に与える影響について実験的に検討した.その結果,打鍵時刻がずれた複数音が「音がずれていない重音・和音」として聞こえるずれの範囲はどの構成音がずれているかに依存していること,重音・和音の音色はずれの絶対値に大きく依存していること,ずれの小さな重音や和音を好む被験者が多いことなどが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とするタイミングに音を出すためにどのような予備動作を行うか,また,望ましい発音タイミングがどのような要素で決定されているかという点についての基礎データの取得と解析が進んでいることから,進捗状況はおおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
音楽表現において望ましいと判断されるタイミングとはどのようなものかを解明するため,単純な和音等を用いた印象評価実験を継続する他,実際の楽曲もしくはそれに近い音列に対して熟練した演奏家がどのように演奏しているかを解析する実験も行っていく。また,リズムやアーティキュレーションの変化に対応しつつ,正確なタイミングで音を発するために予備動作を如何に調節しているのか,また,どのようなリズムの変化が望ましくないテンポの変化をもたらしてしまうのかを,単純なタッピング動作のみならず,ピアノ等の演奏時の全身運動の計測実験を実施することによって解明していく予定である。
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Causes of Carryover |
成果発表のために参加した学会がオンライン化されたこと,開始したデータ解析を優先的に行うために,初年度に予定していた計測実験の一部を翌年度に変更したため,次年度使用額が生じた。 翌年度に成果発表を行うこととした国際学会の参加費および旅費に充当する他,新規に開始する実験に必要な装置の導入に利用する予定である。
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