2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K18649
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 観自 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (20727086)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 自己主体感 / 行為主体感 / 遡及的変調 / 偶発的イベント / 帰属 / 視覚効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
行為している感覚や外界の変化を引き起こした感覚を指す自己主体感は,感覚運動レベルの制御情報と独立する形で,遡及的に変調する可能性が指摘されてきた.本研究では偶発的なイベントに遭遇した時に,自己主体感がどのように生成され,また遡及的に変調するのかについて検討することを目的にしている.本年度は主に以下の内容に取り組んだ.
1.ゲームにおける代表的な視覚エフェクトで知られるScreen Shake(画面揺れ)が主体感の遡及的変調に与える影響を検討した.参加者は一人称視点で,画面中の剣を制御して敵を攻撃した.攻撃が当たった時に,複数のパラメータで構成された画面揺れ効果が発動した.イベント後,参加者は剣の制御に対する主体感を評価した.その結果,画面揺れ効果の程度が強いほど主体感は高くなることが分かった.ただし,画面揺れ効果が弱い条件と呈示されない条件の間に差がなかった.これらの結果から,主体感を遡及的に変調させるには視覚エフェクトに一定の強度が必要であることが示唆された. 2.3軸圧力センサを使った実験を実施するための環境セットアップを進めた.これにより,実験参加者が押したか押していないか判断できないといったあいまいな状況下でのフィードバック呈示が可能になった. 3.ストレス等で変化することが知られている皮膚電気活動に着目し,主体感が低くなる場面のときに皮膚電気活動が大きくなるのかどうかについて予備実験を行った.参加者はジョイスティックを用いて画面上のターゲットを操作し,妨害刺激を避ける課題を行った.その結果,操作時にターゲット運動に回転が加わった条件とそうでない条件では,主体感に差が生じた一方で,皮膚電気活動には差が見られなかった.これは予測誤差の検出が主体感の低下に寄与している一方で,ストレス反応とは独立,あるいは検出される水準には達していなかったことを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
皮膚電気活動を含めた課題中の生理反応を取得できる実験を開始できたこと,3軸圧力センサを使った実験環境をセットアップできたこと,特殊な視覚的効果を用いて主体感を変調させる実験を行えたことなどが理由として挙げられる.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に整備した環境を用いて,実験を継続していく.得られた成果については学会や研究会で発表を行い,並行して論文作成を進め学術誌に投稿するなど,成果の公表に努める.
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Causes of Carryover |
(理由)実験開始を遅らせたため,実験参加者謝金・補佐員に必要な予算として計上していた枠に残額が生じた.また成果を報告するための学会発表が次年度以降にずれ込んだことで,旅費の使用が少なかった.
(使用計画)実験参加者謝金・技術補佐員として使用することを予定している.また積極的に研究成果を学会等で発表するようにし,そのための旅費として使用することを予定している.
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