2023 Fiscal Year Annual Research Report
Extreme-value analysis of neuronal cargo transport
Project/Area Number |
22K18679
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 久美子 東京大学, 物性研究所, 教授 (00585979)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | モータータンパク質 / キネシン / ダイニン / 神経細胞軸索輸送 / 極値統計学 |
Outline of Annual Research Achievements |
極値統計学は諸現象の最大値を推測する方法で、かつては土木系や品質工学などの応用が多かったが近年応用が広がっている。本研究では極値統計学を生命科学、特にナノバイオ系であるモータータンパク質による小胞輸送に応用することを目指した。 生きている線虫内の神経細胞軸索で、モータータンパク質(キネシンとダイニン)が輸送するシナプス小胞前駆体の輸送を研究対象にした。細胞体から軸索末端への順行性輸送はキネシンが、軸索末端から細胞体への逆行性輸送はダイニンが担う。シナプス小胞前駆体に蛍光ラベルし、時空間分解能の高い蛍光イメージングを行った。蛍光動画のキモグラフ解析から輸送速度を計測し、極値統計解析を行った。一般化極値分布を調べた結果、キネシンによる順行性輸送の速度データは最大値が存在するワイブル型に属すが、ダイニンによる逆行性輸送の速度データはワイブル型にならなかった。物理的にダイニン速度の最大値は存在するはずなので、興味深い結果である。2023年度はこの一見した矛盾(物理的にダイニン速度の最大値は存在するはずなのにワイブル型にならない)を解決するために、軸索輸送モデルの数理シミュレーションを行った。モータータンパク質の速度-負荷関係の凸性がワイブル型になる条件であることを見出した。モータータンパク質の速度-負荷関係の関数形はモータータンパク質の種類によって異なるが、歩行メカニズムと関連している。今回の神経細胞軸索輸送の極値統計解析は細胞内でのモータータンパク質の歩行メカニズム解明に役立つことが期待される。
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