2022 Fiscal Year Research-status Report
ナノダイヤモンドを用いた超高感度超高圧高周波数電子スピン共鳴測定法の開発
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22K18691
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 仁 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (70194173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 敬博 神戸大学, 研究基盤センター, 助教 (60379477)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | NVセンター / 光検出磁気共鳴 / ダイヤモンドアンビルセル / テラヘルツ / 電子スピン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは,これまで試料空間が相対的に大きい(内径5mm)ピストンシリンダー型圧力セルのピストン部分をジルコニアに置き換え,テラヘルツ波の透過を可能にして,ミクロスコピックな情報が得られる高圧高周波数電子スピン共鳴(ESR)測定法を行い,多様な量子スピン系の圧力効果を明らかにしてきた。ピストンシリンダー型は,試料が多く(スピン数が多い),高周波数ESRの従来型半導体検出器の感度で測定可能であるので用いてきたが,発生圧力は3GPa弱に止まっていた。そこで,100GPaレベルの超高圧を目指すには,ダイヤモンドアンビル圧力セルを用いる必要がある。しかし,ダイヤモンドアンビル圧力セルの内径は0.5mm以下と極端に小さな試料空間であるため,従来型半導体検出器の感度では,全くESR測定は不可能である。そこで,従来ESR手法に比べ,超高感度なダイヤモンド窒素-空孔中心(NV-センター)を用いた光検出磁気共鳴(ODMR)によって,ダイヤモンドアンビル圧力セルを用いた超高感度超高圧高周波数ESR測定を実現することが本研究の目的である。特に,本研究ではNV-センターを持つナノダイヤモンドを圧力媒体に溶かして,そのNV-センターを介して磁性体試料の磁気モーメントのESRを検出することを目指す。つまり,微小試料の外部磁場下テラヘルツESRによるスピン状態変化を,近傍のNV-センターが有効磁場変化としてNV-センターのms=±1状態のゼーマン分裂変化として受け取り,ODMRの蛍光強度変化として高感度テラヘルツESRとして観測されるという原理である。ODMRを用いたESR観測は,従来のESR観測に比べ10桁高い感度を持つので,単一NV-センターの観測が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超高圧を発生できるダイヤモンドアンビルセルは,2つのダイヤモンドアンビルを対向させ,その間に内径0.5mm以下の穴をあけたガスケットをはさむ。そして,穴に圧力伝達媒体と試料を入れ,2つのダイヤモンドアンビルを押し付け合い圧力を発生する。この穴が微小なので,超高圧が発生するが,試料も微小になり,通常のESRでは観測が不可能である。本研究では,申請者らがすでに別予算で購入し,所有しているダイヤモンドアンビル圧力セルを使用する。また,通常ダイヤモンドアンビル圧力セルの圧力校正には,圧力媒体とともにガスケットの穴に封入したルビーの蛍光線分裂の圧力依存性から行うが,その測定のための蛍光測定装置は分担者所有のものを用いる。次に,本予算の枠内で,新たにODMR測定装置を構築することは不可能であるので,国内で共同研究として使用させてもらえ,本研究を遂行可能なODMR装置のサーチと検討を行った。その結果,岡山大学理学部化学科の藤原正澄准教授研究室のODMR装置に到達した。藤原研究室は,測定対象の自由度が大変大きい自作ODMR装置を所有しており,ナノダイヤモンドを用いたODMR測定による温度計測や生体応用など,多様な研究を展開しており,その測定技術は本研究の遂行に申し分ないものである。すでに,申請者と分担者で,本予算の出張旅費を用いて藤原研究室を訪問し,共同研究の合意を藤原准教授より得た。また,その際,藤原研究室のODMR装置周りの検討も行い,ダイヤモンドアンビル圧力セル内のナノダイヤモンドのODMR測定に必要な対物レンズや,ステージ機構などを検討し,計測に向けた準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
藤原研究室では,主に2次元的な試料の測定を行っているので,対物レンズは比較的焦点深度が浅いものが用いられている。一方,ダイヤモンドアンビル圧力セルでは,ダイヤモンドの厚さに加え,2つの対向ダイヤモンドアンビルを押し付け合うため,ネジ機構がついた金属フレームが存在する。その結果,対物レンズから焦点を結ぶべきガスケット穴までの距離が大きく,対物レンズに焦点深度が深いものを準備する必要がある。その上で,ガスケット厚さほど,焦点の稼働域が必要となる。このような条件の対物レンズが必要で,検討を進め,今後購入する。また,ダイヤモンドアンビル圧力セルの高さを考慮しつつ,それを固定して,xyz方向に精密に稼働できるステージが必要である。大きさやODMR装置の拘束条件に配慮しつつ,そのステージの設計を進めている。なお,ナノダイヤモンド,ダイヤモンドアンビル圧力セルとODMR測定を用いた超高感度超高圧高周波ESR測定の実証実験は,可能な実験環境を考慮してとりあえず室温で行う予定である。最後に,ダイヤモンドアンビル圧力セルを用いた超高圧発生は,申請者らがこれまで行ってきたピストンシリンダー型圧力セルの高圧発生に比べ,一段高いレベルの全く異なる技術ということができる。そこで,ダイヤモンドアンビル圧力セルを用いた超高圧発生技術に関して国内の第一人者である大阪大学基礎工学研究科附属極限科学センター超高圧部門の清水教授の指導を受ける予定である。すでに,清水教授の了承は得ている。
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Causes of Carryover |
本研究遂行に不可欠なODMR測定用の対物レンズ仕様決定と,ステージ設計による支出が翌年度にずれ込んだため。本年度中には,確実に執行される予定である。
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Research Products
(3 results)