2023 Fiscal Year Annual Research Report
Ultra-low temperature scanning-tunneling microscopy studies on bottom-up strongly correlated electron systems
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22K18696
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
花栗 哲郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (40251326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 理 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (60570695)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 走査型トンネル顕微鏡 / 単層膜 / ひねり積層 / 超伝導 / スピン液体 / スピン検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
非自明な電子状態を人工的に作り出し、その電子状態を走査型トンネル顕微鏡(STM)によって分光学的に解明することを目指した。対称物質として、超伝導体である1H-NbSe2単層膜とMott絶縁体かつスピン液体候補物質である1T-TaSe2単層膜に注目し、分子線エピタキシー法(MBE)によってこれらの単層膜を作製した。 作製した単層膜は、希釈冷凍機温度で動作する超低温走査型トンネル顕微鏡に搬送し、分光イメージング測定を行った。1H-NbSe2単層膜の結晶格子は、基板であるグラフェンの格子に対して捻られていることがわかった。超低温でのトンネル分光により、超伝導ギャップ内に残留状態密度が現れることを明らかにした。残留状態密度の空間分布をFourier解析し、波数空間で1H-NbSe2単層膜とグラフェンのFermi面が重なる部分で1H-NbSe2の超伝導ギャップが小さくなっていることを見出した。この結果は、捻り角によって超伝導の性質を制御する手法を提供する。1T-TaSe2単層膜では、スピン1/2を持つと考えられる六芒星クラスターで特徴づけられる電荷密度波と、スピノンFermi面に関連すると考えられている格子不整合な電子状態の超構造を観測した。スピン液体状態に関する情報を得るため、電子状態の磁場依存性の測定を行った結果、六芒星クラスターには磁場依存性を示すものと示さないものがあることがわかった。しかし、今のところ磁場方向や磁場の印加履歴による系統性が見られず、さらなる研究が必要である。 この他、電子状態解明の新手法として、STM探針に超伝導体を用いてスピン検出を行う方法を検討した。原子操作を用いて作製したYu-Shiba-Rusinov状態を用いる方法に加え、Zeeman分裂を利用した手法の定式化を行い、実データの予備的解析にも成功した。
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