2022 Fiscal Year Research-status Report
金属有機構造体を用いたプラズマ生成活性種の選択的活用
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22K18700
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 剛仁 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70452472)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | プラズマプロセス / 金属有機構造体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細孔サイズを多彩かつ高精度に制御可能な金属有機構造体(MOF)を用いたプラズマ生成活性種の新たな選択的活用手法を創出することである。より具体的には、3つの観点、(a)篩としての特定活性種の取り出し、(b)特定活性種のMOF内での利用・反応、(c) 吸着による特定活性種の保存・輸送、への可能性を検証し、「MOFを用いたプラズマ生成活性種の新たな選択的活用手法」を創出することを目的としている。 該当期間においては、プラズマ雰囲気での篩としての評価と、相互作用の基礎となる実験装置の準備、更には、分子動力学法による現象の理解に取り組んだ。様々なMOFを用いた研究を展開する計画であるが、安定度の高いZeolitic imidazolate framework (ZIF-8)を用いた実験から着手した。 低圧グロー放電を用いたこともあるが、プラズマ中でZIF-8に明瞭な損傷は見られないことを、X線回折法(XRD)や、フーリエ変換赤外分光法、走査型電子顕微鏡などで確認をした。あわせて、プロパンなどの炭化水素分子から生成される水素原子/分子のその場抽出を行い、プラズマ中の特定の粒子を優先的に抽出できることを実験的に確認した。 また、分子動力学法を用いた現象の理解にも取り組み、例えば、窒素原子においては、窒素分子と比較し、粒子サイズの減少による効果よりも、反応性の寄与により、MOF内の特定の位置に停滞する傾向がみられた。これらの結果などから、反応活性種の貯蔵に対する可能性の高さを改めて実感し、その検証に向けた準備に取り組んだ。水晶振動子をもちいたMOF構造物の重量変化に関する検証を可能とする実験装置の構築を進め、検証実験が出来る状態に近づけることができた。 以上の様に、プラズマ―MOF相互作用に関する可能性を一部実証することができ、また、更なる展開に向けた十分な進展が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、プラズマ生成物質を、二次反応を起こす可能性を下げる形で抽出することに成功した。反応性の高いラジカルをそのまま取り出すことの実証には至らないものの、プラズマとMOFからなる反応系の特徴の一つを示すことができている。また、重量変化に関する装置準備や、分子動力学法を用いた解析における基盤形成も順調に進めることができており、十分な成果に結びついていると感じている。以上の様に、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における当初目標は、3つの観点、(a)篩としての特定活性種の取り出し、(b)特定活性種のMOF内での利用・反応、(c) 吸着による特定活性種の保存・輸送、への可能性を検証し、「MOFを用いたプラズマ生成活性種の新たな選択的活用手法」を創出することであった。その内、(a)においては一定の成果が得られており、最終年度でもある2年度目にも引き続き取り組んでいく。(c)に関しては、実験準備を進めることができているので、それを用いた実験検証に取り組む。(b)に関しては、その経過において、考察を深められる事象が得られると考えており、結果、並列して取り組んでいく。また、初年度に準備を進め、成果が得られつつある分子動力学法を用いた解析にも取り組み、現象の理解からなる更なる可能性の探求にも取り組んでいく。 以上を通じ、プラズマーMOF反応系の可能性の高さを実験・計算両面から明らかにしていくとともに、成果を世界に先駆けて配信していく計画である。
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Causes of Carryover |
早期に研究の立ち上げをするため、当初購入予定であったターボ分子ポンプの代わりに、現有のターボ分子ポンプを用いたなど、初年度は、当初の計画に比べて、結果として使用額が抑えられる形となった。また、実験結果の再現性の確認などに時間を費やし、材料・化学薬品費が当初予定に比べ抑えられたことも一つの要因である。システムとしてはほぼ構築しつつあり、また、多くの消耗品が予想される実験計画が残されているため、2年目の出費額は、当初予想を上回ると考えており、研究期間合計額としては、当初予定通りとなるものと考えている。
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Research Products
(1 results)