2022 Fiscal Year Research-status Report
Search for rare decay events of 112Sn by new-generation gamma-ray spectroscopy
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22K18709
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市村 晃一 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (80600064)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 極稀事象探索 / 超伝導素子 / ガンマ線分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではスズをガンマ線吸収体として用い、スズ112の2重電子捕獲反応で生じる微弱なエネルギー吸収を超伝導素子で直接観測する新しい物理探索手法の原理検証を目的とする。 2022年度においては、本研究での探索目標であるスズ112の2重電子捕獲反応の雑音事象となるスズ中の放射性不純物量を高純度ゲルマニウム検出器を用いて評価し、有意な鉛210起因のガンマ線とビスマス210に起因する制動放射線の信号が検出された。将来的にはこれら不純物の純化を行う必要があるが、現状ではエネルギー較正や、実験データ取得中の安定性の評価に利用可能であることを確認した。得られた不純物量情報を用いた雑音事象のシミュレーションも進めている。 また、KID(Kinetic Inductance Detector)を超伝導素子として用いたガンマ線検出器の研究開発を東北大学ニュートリノ科学研究センターが有する希釈冷凍機を用いて行っている。現在はスズと同族の鉛を吸収体として用いたデータ取得を行っており、検出器応答の安定性やエネルギー分解能などの性能評価を進めている。 さらにTES(超伝導転移端温度計)を用いた探索について新たに着目し、スズを吸収体として用いた多画素ガンマ線TES検出器技術をすでに確立している実験グループと共同でTESでの信号データ解析を開始した。 これらの研究進捗について研究会で紹介し、期待される2重電子捕獲反応信号スペクトルの評価に必要なエネルギー補正についての議論や将来の研究発展についての活発な議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載したKID(Kinetic Inductance Detector)を用いた探索では予定より遅れており、スズを吸収体として用いたデータを取得するまでには至らなかったものの、スズと同族の鉛で安定して信号データが取得できるようになり、現在信号波形の理解を進めている。 一方研究計画に記載していなかったTES(超伝導転移端温度計)を用いた研究可能性について発展し、すでにスズを吸収体として多画素で取得したデータを有する実験グループと共同でデータ解析と感度評価を行えるようになった。このように2年目以降にKIDを用いた研究で計画していた内容をTESを用いて解析フェーズまで進めたため順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度ではTES(超伝導転移端温度計)を用いたデータ解析をとりまとめ、現段階でのニュートリノを放出する2重電子捕獲反応探索感度の評価と今後半減期の理論値(10の22乗年)をカバーする範囲での探索に必要な素子数、高純度ゲルマニウム検出器での不純物量評価や宇宙線から予測される雑音事象量などを評価し研究成果として発表する。 並行してKID(Kinetic Inductance Detector)を用いた研究開発では本年度できなかったスズを吸収体として用いた測定を行い、線源を用いたエネルギー応答性の評価や時間安定性の評価を進め、最適な素子の形状を決定し、多画素での測定に着手する。
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Causes of Carryover |
KIDを用いた探索では安定した性能を得るまでに時間がかかったため、多重読み出しやそれに係る費用を次年度以降に用いるために次年度使用額が生じた。 本年度では上記KIDを用いた研究開発のために使用するほか、TESを用いた探索結果について取りまとめ国際会議や論文として発表するための費用に用いる。
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