2022 Fiscal Year Research-status Report
高圧水を必要としない地震の断層の新しいモデルと高サンプリングデータによる検証
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22K18734
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
飯尾 能久 京都大学, 防災研究所, 教授 (50159547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 一生 京都大学, 防災研究所, 助教 (00572976)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 断層の強度 / 間隙水圧 / 粘性流動 / 地震活動 / 長野県西部 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 秒間に1万点という通常の100 倍の時間分解能を持つ高サンプリング地震データの処理・解析を進め、1995年から2022年までの約27年間の高精度の地震の震源と読み取り値のカタログを作成した。これらのデータおよび2008年から開始した満点システムによるデータを用いて、高い空間分解能で応力逆解析を行い、応力場の空間変化とモール円による間隙水圧の推定を行った。その結果、2017年長野県南部の地震(M5.7)の余震域の周辺における応力場の不均質を見出し、その原因を検討した。また、得られた応力値を活用したモール円の解析により、最小圧縮応力を超えるような高い値を含む、幅広い間隙水圧の分布が計算された。この幅広い分布は、断層の強度低下が高間隙水圧によるものではなく、摩擦係数の低下によることを示唆している。応力場の推定精度を高めるために、逆解析プログラムの計算速度の向上を図り、約5倍の高速化を達成した。通常の100 倍の時間分解能を持つ高サンプリング地震データの波形相関解析により、高精度の相対震源決定を行い、時空間的に集中して発生した地震群の震源分布を詳細に解析した。その結果、マグニチュード4クラスの地震の前震活動に関して、面状ではなく塊状を示すものが多いこと、また、震源移動が見られるものが多いが、その中には活動領域の飛びがあるものがあり、隣接領域を次々とカスケード的に破壊しているのではないことが示唆された。断層の強度の低下をモデル化するため、有限要素法(ABAQUS)による検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
約27年間にわたる高精度の地震の読み取り値のカタログを作成したことにより、地震波速度構造の時間変化の推定のための準備が整った。また、P波初動の読み取りを高精度化して10m程度という極めて高精度の相対震源決定精度を達成することが出来た。これにより、時空間的に集中して発生する地震活動がカスケード的かどうかを推定することが可能となった。マグニチュード4クラスの地震の前震活動に関して、面状ではなく塊状を示すものが多いことは、本研究により新たに指摘されたもので、今後の進展が期待される。応力場の逆解析においては、計算速度の制約のために、これまで十分な解析を行うことが難しかったが、桁違いの高速化が達成されつつあることは、今後の解析の高分解能化や高精度化に直接結びつくものである。
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Strategy for Future Research Activity |
逆解析プログラムの問題点を改善することにより、計算速度のさらなる向上が期待される。これまで計算速度の制約のために不可能だった、より大量の高精度のデータを活用して応力場を推定することにより、より高分解能の応力場の空間変化と間隙水圧の確かな推定を行う。作成された高精度の地震の読み取り値のカタログを用いて、地震波トモグラフィーにより、速度構造の時間変化を推定する。そのための計算サーバー等の整備は完了している。
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Causes of Carryover |
高サンプリング地震データの処理および解析システムの整備に時間を要したため、地震波速度構造の時間変化の解析の開始が遅れ、次年度使用が生じた。次年度には、地震波速度構造の時間変化の解析を本格的に始めて、関連する経費を使用する予定である。
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