2023 Fiscal Year Research-status Report
Mitigation and promotion of hydrogen environment embrittlement by controlling electron density on material surface
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22K18763
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
薦田 亮介 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90801308)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 水素ぜい化 / 水素侵入 / 電子密度 / 静電誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は本研究の2年目の年である.当該年度は初年度に開発した電場を付与できる水素ガス中引張試験機を用いて,種々の低ひずみ速度引張試験(SSRT試験)を実施した.試験片にはSCM440低合金製の丸棒試験片を用いた.試験片の平行部直径は3.5 mm,平行部長さは20 mmとした.試験片には水素の影響を促進するため,平行部に切欠きを導入した.その際,電場の向きの影響を評価するために,環状切欠ではなく,同一断面内に平行に2本の切欠を0.3 mmのワイヤーを用いた放電加工によって導入した.切欠きの深さは0.25 mmとした.水素ガス圧力は1 MPa,温度は室温,荷重速度は2×10^-5 mm/s(ひずみ速度1.0×10^-6 /sに相当)とした.電場の付与のために設置した極板と試験片との距離は1.0 mm,極板間に付与した電圧は1.2 kVとした.試験後は水素の影響の有無を調査するため,破面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した. 電場を付与せずに行った窒素中SSRT試験後の破面では,典型的な延性破壊の特徴であるディンプルが観察された.一方,電場なしの水素ガス中では,破面は擬へき開(QC)破面となっており,水素によって破壊形態が変化していた.電場を切欠の深さ方向に平行に付与した水素ガス中の試験では,プラス極側では電場なしの場合と同様にQC破面が観察されたが,マイナス極側ではディンプル破面が観察され,マイナス極側で水素脆化が抑制された.マイナス極側では静電誘導により材料表面の電子密度が粗となるため,水素の侵入に必要な,材料表面から水素分子への電子の供給が妨げられたためであると考えられる.つまり,本研究の最大の目的であった,材料への電場の付与による水素脆化のコントロールが可能であることを実験的に示すことに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度では,本研究の最大の目標であり,最大の難関であった,静電誘導による材料表面の電子密度のコントロールによる水素脆化挙動の制御が可能であることを実験的に示すことに成功した.このことは研究代表者の知る限り世界初の発見であり,申請書に記載の通り,今後様々な発展が期待できる.故に,当初の計画以上に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
静電誘導による材料表面の電子密度のコントロールによる水素脆化挙動の制御が可能であることを実験的に示すことに成功した.しかし,静電誘導の影響評価は定性的な評価にとどまっている.今後は静電誘導の影響を定量的に評価可能な手法の開発を試みる. 具体的には,SENT型の試験片を用いることを計画している.通常,SENT試験片を用いた試験では試験片に取付けたクリップゲージでき裂開口変位を測定するが,本試験では電場を付与する都合上,クリップゲージが使用できない.き裂開口変位を測定せずにSENT試験片で得られる結果の評価法を確立する必要がある. また,静電誘導による水素脆化の制御に及ぼす種々の因子の影響(水素ガス圧力,温度,材料,等)も時間の許す限り評価する計画である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:挑戦的研究(萌芽)は基金分であり,年度をまたいだ使用が可能であるため,研究費の効率的な使用を鑑み,今年度で使い切らず残したため. 翌年度の使用計画:静電誘導の影響の定量的評価のためにSENT試験片を用いる計画である.SENT試験片には予き裂を導入する必要があるため,予き裂導入のための装置を40万円程度で作製する.試験に必要な水素ガスと窒素ガスを購入する.その他,消耗品に充てる.
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Research Products
(1 results)